研究課題/領域番号 |
19H02631
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上向井 正裕 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80362672)
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研究分担者 |
片山 竜二 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40343115)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / 半導体レーザ / 非線形光学デバイス / 量子情報処理 |
研究実績の概要 |
2種の周期的深溝構造を用いたInGaN量子井戸波長可変単一モードレーザの性能向上を目指し、作製プロセスの改善を行った。昨年度成功した周期的スロット構造レーザの波長可変単一モード発振に続き、本年度は高次結合DBRレーザにおいても単一モード発振が得られ、パルス駆動でスロットレーザより一桁高い約5 mWのピーク出力光パワーを得た。電流注入に問題が生じ、作製プロセスのさらなる改善が必要である。2種の周期的深溝構造レーザに関して、国際会議1件、国内会議3件の発表を行った。 窒化物半導体導波路型非線形光学デバイスについては、ICP-RIEによる膜厚調整、表面活性化接合条件最適化およびSi基板除去プロセス改善により、所望の膜厚を有する2層極性反転積層導波路の作製プロセスを確立した。これにより、さらなる高効率化が期待できる3層以上のGaN極性反転積層非線形光学デバイス実現のめどがついた。また極性反転エピタキシャル成長によるGaNおよびAlNの2層極性反転積層構造を用いて、チャネル導波路を作製した。散乱損失の原因となる導波路側壁荒れが避けられないNiストライプマスクに代わり、SiO2ストライプマスクを用いることで-c面AlN層の保護と導波路側壁荒れの低減に成功した。今後は2種の極性反転積層構造を用いて、種々の導波路型非線形光学デバイスの作製・評価を行っていく。 また光パラメトリック下方変換デバイスとして、広帯域光子対発生用GaN導波路型微小共振器デバイスの設計・作製を行った。窒化物半導体非線形光学デバイスに関して、国内会議8件、国際会議3件、招待講演3件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形光学デバイスの励起光源となる400 nm帯波長可変単一モードレーザの実現を目指して高次結合深溝DBRレーザの設計・作製を行い、パルス駆動において波長402.8 nm、サイドモード抑圧比15 dBの単一モード発振が得られた。電流注入に問題が生じ波長可変特性は確認できなかったものの、周期的スロットレーザより高い5.4 mWのピーク出力光パワーが得られた。 横型擬似位相整合非線形光学デバイスにおいては、表面活性化接合と極性反転エピタキシャル成長の2つの手法でGaN極性反転積層構造の形成を行った。前者では、接合可能な表面平坦性を維持したICP-RIEによるGaN膜厚調整とSi基板除去プロセスの確立に成功した。後者では、マスク材料をNiからSiO2に変更することで、チャネル導波路形成プロセスの歩留まり向上と散乱の原因であった導波路側壁荒れの低減に成功した。 このチャネル導波路は断面積が微小なため励起光の端面結合が困難であるが、コンピュータ制御で端面結合を行える光学系を構築し、非線形光学デバイスの効率的な特性評価の準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
2種の周期的深溝構造を用いたInGaN量子井戸レーザにおいて、パルス駆動で青色単一モード発振が得られたものの、電流注入に問題が生じ出力光パワー・波長可変範囲とも目標とする性能が得られなかった。今後はオーミック電極形成プロセスの改善と半田付け実装によるCW駆動でのレーザ発振を目指す。並行して同一導波路で形成できる半導体光増幅器を波長可変単一モードレーザとモノリシック集積することで、さらなる高出力化を図る。(上向井) GaN極性反転積層構造を用いた横型擬似位相整合導波路型非線形光学デバイスにおいて、スクイーズド光発生デバイス実現の前段階として光パラメトリック下方変換(OPDC)デバイスを作製し、InGaN量子井戸レーザを励起光源として時間相関光子対発生を目指す。このとき、励起光を1次導波モードとして導波路に結合させる必要があるが、これを可能とする入力グレーティング結合器を設計・作製してOPDCデバイスに集積する。(上向井) 2つの単一光子検出器と同時計数測定器を用いて量子干渉光学系を構築し、OPDCデバイスから時間相関光子対発生および偏光もつれ光子対発生を確認する。(片山)
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