研究実績の概要 |
可視・紫外領域の光電界は、ペタヘルツ(10^15 Hz)級の周波数に達し、この光電界により誘起される電子分極は様々な物理現象を生み出している。このペタヘルツ級の光学応答現象を時間分解計測するためには、アト秒(10^-18 秒: as)の時間分解能が要求される。本研究では、極限的な短パルス光源である単一化されたアト秒パルスを用いて、物質内部で生じる超高速の電子分極応答(吸収・反射・屈折など)の物理起源の解明に挑む。 2019年度、2020年度の研究計画において、我々は超広帯域連続スペクトルを持つダブルアト秒パルスを用いた位相干渉光学系を開発した。最終年度(2021年度)において、この干渉光学系に、近赤外フェムト秒パルスを加えることで、原子系内殻電子の運動計測に成功した。本研究において、ダブルアト秒パルスによりアルゴン原子の内殻電子を励起し(3s-4p, 5p, 6p【各緩和時間:8 fs、23 fs、52 fs】)、さらに近赤外フェムト秒パルス(パルス幅:6 fs)により過渡的な屈折変調を誘起した。本手法はスペクトル位相干渉を利用した計測であるため、単純なフーリエ変換により複素応答(振幅、位相)を得ることができる。結果として、内殻励起の過渡的な複素屈折(吸収・分散)を決定することが可能となるため、新たな内殻電子の波動制御に繋がる重要な成果である。 本成果は、米国光学会(OSA)の招待講演[H. Mashiko et al., CLEO-PR 2022, Sapporo, Japan, July 31-August 6 (2022)発表予定]を筆頭に、招待講演4件、一般講演2件、応用物理学会フォトニクス分科会にて優秀発表賞(横国大:大島氏)に採択される等の多数の成果を得ている。また、原著論文は執筆中である。
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