研究課題
磁気1次反転曲線(FORC)法は近年急速に発展しつつある磁気的手法であり、磁性材料特性の平均値を評価する磁気ヒステリシス法では得ることができない保磁力分布及び相互作用分布を同時に評価可能である。本研究では、ポータブル型FORC測定装置を開発し、国内外の研究施設が保管する中性子照射済み試験片についてFORC測定を系統的に実施することで、照射脆化に対する新たな磁気的非破壊評価法として、FORC法の有用可能性を検証し総括することを目的としている。目的の達成のため、2020年度はポータブル型FORC測定装置の構築、磁気特性及び微細組織が既知の低炭素鋼棒状試料を用いた性能評価を行った。具体的には小型電磁石、精密コイル附属の棒状試料専用治具、計測システムにより構築したFORC測定装置について計測条件(検出電圧処理、磁場振幅、周波数など)を変えたときの磁気特性を評価し、FORC測定を最適に実施するための条件出しを行った。また、東北大学金属材料研究所大洗施設の共同利用の下、照射脆化評価用として、純鉄、圧延率が異なるFe-1wt%Cu 熱時効材(照射脆化模擬材)およびロシア型圧力容器鋼モデル合金の中性照射実験をベルギー材料試験炉BR2で実施した。2021-2022年度のFORC測定を見据え、これら照射後試料を大洗施設に搬入した。更に、2021年度の中性子照射実験用として、照射脆化のキー元素であるNi量を系統的に変えた軽水炉原子炉圧力容器鋼モデル合金の照射前磁気特性データを採取した。
2: おおむね順調に進展している
本研究で必要なポータブル型FORC測定装置の性能評価と最適化を行ったとともに、FORC法の有用性を検証するための各種合金の中性子照射実験と準備を進めることができたため。
2021年度は中性子照射材のFORC特性を精度良く測定するために、製作したポータブル型FORC測定装置の性能評価を引き続き行う。また、SQUID磁化測定装置(岩手大学所有)を用いたFORC解析結果と比較検討を行いながらFORC測定装置の最適化も引き続き進める。東北大学金属材料研究所大洗施設に保管の中性子照射材(Cu量を系統的に変えた軽水炉圧力容器鋼モデル合金)のFORC測定を実施する。また、2020年度に中性子照射実験を行った組成が単純な標準試料(純鉄、圧延したFe-1wt%Cu 熱時効材)及びロシア型圧力容器鋼モデル合金の測定前準備を行い2022年度前半までにFORC測定を実施する。更に、Ni量を系統的に変えた軽水炉圧力容器鋼モデル合金の中性子照射実験をベルギー材料試験炉BR2で実施する。最終年度の2022年度は、種々の中性子照射材のFORC測定結果に基づき、中性子照射脆化の非破壊評価に対するFORC法の有用性を総括する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Journal of Nuclear Materials
巻: 552 ページ: 152973-152973
10.1016/j.jnucmat.2021.152973