研究課題/領域番号 |
19H02643
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠田 竜太 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20335227)
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研究分担者 |
近藤 創介 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10563984)
余 浩 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10825871)
福元 謙一 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (30261506)
安堂 正己 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 核融合炉材料研究開発部, 主幹研究員(定常) (30370349)
松川 義孝 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70566356)
藪内 聖皓 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (70633460)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノインデンテーション / マイクロピラー / 材料強度 / 不均一性 / スケール性 / 統計的性質 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノインデンテーション法やマイクロピラー圧縮試験等の超微小試験技術を駆使して、照射脆化に関わる微細組織要素の材料強度特性・変形・破壊の不均一性やスケール性の影響を直接的に明らかにすることを目的としている。 計画初年度である今年度は、これまでに研究実績のある核融合炉向けの低放射化フェライト鋼や銅合金を中心に、押込硬さやマイクロピラー圧縮強度特性の統計的性質に及ぼすスケール性の影響を明らかにした。この中で、低放射化フェライト鋼の押込硬さの分布の空間的な不均一性がサブマイクロメートルのスケールで存在していることが示された。今後、微細組織の不均一性との相関を明らかにする予定である。また、このような不均一性に及ぼす炭化物の影響を明らかにするために、炭化物単体の強度や物性に及ぼす含有元素の影響についても明らかになりつつある。ナノスケールの強度特性に関連するパラメータとその統計的性質を評価することが期待できるTEM内引張その場観察試験法を低放射化フェライト鋼等に適用するための試験片作製法を構築した。 特筆すべき成果として、押込硬さやマイクロピラー圧縮強度特性の統計的性質に及ぼす微細組織影響について、異なるサイズの結晶粒や分散粒子の空間的分布の組織不均一性を有する銅合金を対象としてモンテカルロ法を援用した解析法を開発し、論文発表した点が挙げられる[1]。 [1] Yuchen Liu, Sosuke Kondo, Hao Yu, Kiyohiro Yabuuchi, Ryuta Kasada, (2020) Materials Transactions, 61 ,955-962.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた低放射化フェライト鋼を対象とする材料強度特性・変形・破壊の不均一性やスケール性の影響については、押込硬さの分布の空間的な不均一性がサブマイクロメートルのスケールで存在していることが示されており、押込み硬さの統計的性質に及ぼすスケール性が明らかになりつつある。今後、微細組織の不均一性との相関を明らかにすることによって、微細組織―強度相関モデルの深化を期待できる。また、このような不均一性に及ぼす炭化物の影響を明らかにするために、炭化物個別の強度や物性に及ぼす含有元素の影響についても明らかにすることができている。 更に、TEM内引張りその場観察試験法の試料作製のために引張試験用試料金型製作を実施し、試料作製歩留まり向上により、実験手法の高度化が図られた。純WおよびMoの粒界近傍等の不均一な歪み領域において、交差すべりを伴う転位運動が観察され、低温領域における塑性不安定性要因として転位すべり運動の局所的不安定化が示された。 メカニカルアロイング法と粉末焼結によって作製した銅合金の押込硬さやマイクロピラー圧縮強度特性の統計的性質について、モンテカルロ法を援用したスケール性の影響の解析法を開発[1]するなど、当初の計画以上に進んでいる。 [1] Y. Liu, S. Kondo, H. Yu, K. Yabuuchi, R. Kasada, “Statistical Approach for Understanding the Effect of Specimen Size on the Yield Stress and Its Scattering in Mechanically-Alloyed Cu and ODS-Cu Obtained by Micro-Pillar Compression Test”, MATERIALS TRANSACTIONS 61 (5), 955-962
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、低放射化フェライト鋼や銅合金等における微細組織要素のスケール性に起因する押込硬さやマイクロピラー圧縮強度特性の統計的性質の理解を進めてきた。今後は、照射影響を加味して、照射硬化が生じた場合における統計的性質の変化とその支配因子を明らかにする予定である。 また、TEM内引張その場観察試験法をbcc金属から純鉄及び低放射化フェライト鋼に適用し、照射硬化をもたらす格子欠陥の障害抵抗の定量評価を進めていく予定である。 これらの研究を統合して、低放射化フェライト鋼等における強度・破壊の統計的性質とそれに及ぼす照射影響についてのスケール性を明らかにする。
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