研究課題
限界熱流束(CHF)が、照射によって劣化する可能性がある。この劣化現象を明らかにするため、CHFに与える様々な因子の中で、本年度は、材料をパラメータとして、実験的検討を実施した。試験ブロックの材料として、アルミニウム、炭素鋼(鉄)、銀、銅の4種類を用いるとともに、電子線照射を行い、CHFの変化を実験的に評価した。電子線は、2MeVの電子線を1mAの強度で照射することで、約100kGy/minの照射強度で照射した。照射時間を変化させることで、照射量を変化させた。照射直後に、試験ブロックを伝熱流動ループに設置し、320kg/m2sの質量流量でCHF実験を行った。なお、水の温度は沸点(100℃)であり、飽和沸騰条件における実験である。また、伝熱面の面積はいずれの材料も30mm x 30mmの矩形面である。実験の結果、CHF劣化現象が生じる材料(銅)と、あまり相関がない材料(アルミニウム)、CHFが照射によって増加する材料(炭素鋼、銀)の3種類の実験結果が得られた。銅については、過去の実験と同様に、約100~300kGyの照射量を与えるにおいてのみ、劣化現象が見られた。一方、質量流量を160kg/m2sと、従来の半分とした場合は、照射の効果はあまり見られなかった。強制対流沸騰におけるCHFが特定の照射量と質量流量で得られることを確認することができた。なお、材料の違いは、表面酸化被膜の状況の違いによると想定される。表面酸化被膜がCHFに影響を与えることは知られているが、劣化を起こすメカニズムについては、今後検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
コロナの影響はあったが、予定通りの照射実験を実施することができ、データを取得するとともに、考察を進めることができた
伝熱劣化の状態を可視化することを検討している。なお、今年度、電子線照射設備が耐震補強工事のため、ほとんど利用することができないため、代替手段を検討している。
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International Journal of Heat and Mass Transfer
巻: 165 ページ: 120660~120660
10.1016/j.ijheatmasstransfer.2020.120660
Progress in Nuclear Energy
巻: 127 ページ: 103444~103444
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