研究課題/領域番号 |
19H02649
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小田 啓二 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40169305)
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研究分担者 |
小平 聡 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高度被ばく医療センター 計測・線量評価部, 研究統括(定常) (00434324)
梶野 瑞王 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (00447939)
安田 仲宏 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (30392244)
河口 信義 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (90234690)
金崎 真聡 神戸大学, 海事科学研究科, 助教 (90767336)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 原子力災害 / 放出率推定 / unfolding / 海上放射線計測 |
研究実績の概要 |
原子力発電所が発災した際、あらかじめ設置していた放射線モニターの測定データから放射性物質の放出率を迅速に逆推定する新たな手法の確立を目的として研究を進めている。本課題では、計算モデルによって得られる放射性物質の移流・拡散をレスポンス関数としてunfolding法で解くこと提案するとともに、地形の影響を受けにくく任意の地点を設定可能な海上特殊ブイを用いた放射線モニタリングシステムを開発する。 2019年度、unfolding法を用いた放出率逆推定手法の開発と海上放射線計測用ブイの開発について、それぞれ次のような結果を得た。 まず、逆推定手法の開発では、海上に放射線計測ブイを設置したと仮定し、移流拡散モデルを用いてブイ設置位置周辺の空間線量率を計算した。この結果をレスポンス関数として、unfolding法を用いて放出率の逆推定を行ったところ、シミュレーションで用いた放出率を精度よく再現することができた。また、既存の陸上に設置されているモニタリングポストの情報に加えて、海上に放射線計測用ブイを設置することで、逆推定の精度が向上することも明らかとなり、海上における放射線計測の有用性が確かめられた。 次に、放射線計測用海上特殊ブイについては、別目的で使用される市販品のうち、放射線測定器を装着可能な小型ブイをレンタルし、線量計、データ取得用小型PCを積み込んで実海域にて実験を行った。本実験では、沿岸域に設置したブイを想定し、ブイに一旦保存された線量率情報をドローンを用いて回収することで海上における放射線計測の実証に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
逆推定手法の開発では、今年度、原子力サイトにおける過去10年間のプリューム計算を実施し、自己組織化マップ(SOM)を用いてプリューム方向・形状などの分類を行い、unfoldingに用いるレスポンス関数群を導出するとともに、unfoldingを用いた逆推定手法の確認及び精度の評価を行うことを想定していた。実際には、プリューム計算は完了し、SOMによる分類に着手した。また、導出したレスポンス関数群から、unfolding法を用いて放出率の逆推定を行ったところ、複数の計測地点を組み合わせることで放出率を高精度に再現できることが確認された。即ち、想定していた研究内容をほぼ完遂したと言える。 一方で、放射線計測用海上特殊ブイについては、放射線の空間線量率の計測とエネルギースペクトルから核種同定を行うための線量計ユニットの設計・開発、衛星通信によるデータ収集法の検討、専用ブイの開発を想定していた。今年度は、沿岸域にて放射線計測が可能であることを実証するため、別目的で使用される市販品のうち、放射線測定器を装着可能な小型ブイをレンタルし、海上における動作を確認した。データ収集については、沿岸域であったため、当初想定していた衛星通信ではなくドローンを用いてデータ収集する方法に変更した。この手法は、ドローンの特性上、気象条件に左右される場合があるが、原子力発電所に比較的近い海域において有用な方法であることが確かめられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、1. 移流拡散計算による観測最適配置の決定及び放出率推定の理論的検証、2. 放射線検出器の選択及び通信システムの設計及び製作、3. GPS・バッテリー・測定器を組み込んだブイの設計及び製作、の3つのサブテーマに分けて研究そ推進している。それぞれの今後の方策について以下に述べる。 1つ目のサブテーマについては、昨年度実施した原子力サイトにおける過去10年間のプリューム計算結果について解析を行い、自己組織化マップ(SOM)を用いてプリューム方向・形状などの分類を進める。また、unfoldingを用いた逆推定では海上ブイの最適配置について検討を実施するとともに、他の逆推定手法との計算手法や推定精度の比較を行う。 2つ目のサブテーマについて、放射線の空間線量率の計測とエネルギースペクトルから核種同定を行うための線量計ユニットの設計および試作を行う。海上という特殊な環境下でも、正常に動作する放射線測定器及び通信機器の選定を行い、線量計ユニットとして動作を確認する。また、地上へのデータ送信手段では、2019年度に検証したドローンを用いたデータ回収方法について改善を行うとともに、今年度は気象条件に左右されにくい衛星回線の利用を検討し、通信データ量軽減のための改造を行う。 3つ目のサブテーマについて、ブイは、その中に格納する機器が正常に動作するという条件に加えて、設定された期間内での安定動作、設置地点の海象・気象等の条件等、種々の条件に合わせた設計が不可欠である。すでに開発が行われている放射線計測器を搭載可能なブイをレンタルし、放射線モニタリングへ向けた実海域実験にも着手する。
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