研究課題/領域番号 |
19H02650
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前畑 京介 九州大学, 工学研究院, 准教授 (30190317)
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研究分担者 |
藤原 健 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90552175)
古場 裕介 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線防護情報統合センター, 主任研究員(定常) (10583073)
三津谷 有貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (70784825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気体電子増幅 / GEMシンチレーション / 多画素G-GEM型検出器 / がん治療粒子線 / 線量計測 / 荷電粒子飛跡撮像 |
研究実績の概要 |
ガラス基板上に微細な気体電子増幅器(GEM)を多画素配置した検出器(多画素G-GEM検出器)を用いて、細胞等価に近いAr/CF4混合気体を通過する重荷電粒子の飛跡に沿って発生する電離電子を、気体電子増幅によりシンチレーション光に変換する飛跡画像撮像装置を試作した。 有感領域が100 mm X 100 mmの多画素G-GEM検出器を、壁材が細胞等価で気密性のチェンバー内に取り付けた。チェンバーの上部と下部は、重荷電粒子による電離電子の移動に必要な電界を発生するための平行平板電極とした。上部平板電極は接地して陰極、下部平板電極には正の高電圧を印加し陽極とした。下部陽極電極にはシンチレーション光を透過する必要があるので、導電性を有し近赤外から紫外域までの光を透過する透明導電膜付ガラス(ITO膜ガラス)を使用した。多画素G-GEM検出器の気体電子増幅過程で発光するシンチレーション光はCCDカメラ、あるいは高速撮像が可能なCMOSカメラで撮像できるようにした。試作した荷電粒子飛跡撮像装置にAr/CF4ガスを充填し、がん治療用粒子線に対する応答を実験的に測定した。実験で得られた撮像画像の解析から粒子線線量の2次元分布が得られた。また、電離箱の実測値や荷電粒子輸送シミュレーション計算値との比較により陽子線と炭素線のBragg曲線測定結果が電離箱やシミュレーション計算結果をある程度再現することを示した。また、Am-241線源から放射されるアルファ粒子の飛跡撮像の予備実験を実施し、高速撮像が可能なCMOSカメラを用いることでアルファ粒子飛跡の動画を記録できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試作した荷電粒子飛跡撮像装置で、がん治療用粒子線に対する応答を実験的に測定し、撮像画像データの解析により、粒子線線量の2次元分布を得ることができた。電離箱の実測値や荷電粒子輸送シミュレーション計算値との比較により陽子線と炭素線のBragg曲線測定結果が電離箱やシミュレーション計算結果をある程度再現できた。また、Am-241線源から放射されるアルファ粒子の飛跡撮像の予備実験を実施し、高速撮像が可能なCMOSカメラを用いることでアルファ粒子飛跡の動画を記録できることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
充填機体の圧力調整を可能とする単芯線比例計数管を準備し、様々な混合気体の減圧状況下における気体電子増幅シンチレーション光と線量との関係を実験的に測定する。次にがん治療用粒子線に対する応答を実験的に測定し、電離箱の実測値や荷電粒子輸送シミュレーション計算値との誤差の原因を解明する。加えて、荷電粒子飛跡撮像装置でアルファ粒子の飛を静的および動的に撮像し、荷電粒子輸送シミュレーション計算により飛跡の微視的構造と飛跡に沿ったと微視的線量分布についての解析手法を構築する。 以上の研究成果を統合して、重荷電粒子の飛跡に沿った吸収線量の空間分布をデルタ線生成など電離現象の微細構造を含む細胞領域の吸収線量へと変換する物理モデルの構築を目指す。
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