研究課題
加速器施設において、構造材の照射損傷量の指標である標的原子1個当たりの原子弾き出し数(DPA)は構造材の交換頻度や健全性評価において重要である。粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの独自の原子弾き出し損傷モデルを検証するため、これまで国内において、陽子照射による金属の弾き出し断面積測定とモデル改良を実施した。しかし、国内で実験不可能な、米国フェルミ国立加速器研究所(FNAL)等における100 GeVを超える弾き出し断面積の測定は皆無である。本研究では、FNALにおいて、弾き出し断面積と関連する120 GeVの陽子を用いた極低温(4 K)の金属の照射欠陥に伴う電気抵抗増加を測定した。試料は直径250μmのAl、Cu及びWワイヤーとし、製作した小型照射チェンバー内の冷凍機に付属した。照射チェンバーをビームライン上に設置した遠隔操作可能なテーブルに設置した。ビーム幅σ=5.7 mm、及び1平方メートルあたりのフルエンス 10の18乗個の陽子に対するサンプルの電気抵抗増加量は、数十ナノ~マイクロΩオーダーであった。最新の欠陥生成効率モデルをPHITSに組み込み、120 GeV陽子に対する弾き出し断面積の計算値を、電気抵抗増加量とビームフルエンスから得られた実験値と比較した。その結果、計算値は、実験値と実験誤差の範囲内で一致すること、陽子エネルギー1~120 GeVの範囲で核的損傷は一定であるため、弾き出し断面積は殆ど同じであることがわかった。本研究成果のモデルが組み込まれたPHITSを国内外のユーザーに配布し広く公開した。また、本研究の成果が米国、欧州等の国際研究機関からなる、加速器の放射線損傷に関する国際研究協力会合(RaDIATE)において高く評価された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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