研究課題
本年度は以下の2項目を実施し,提案する地中熱利用システムの有効性をフィールド試験で検証するとともに同システム普及のための地中熱利用ポテンシャルマッピングを開始した。1. 秋田平野における揚水を伴う冷暖房試験秋田大学構内に設置された深度60mの地中熱交換井2本とこれを熱源とした能力10kWの地中熱利用冷暖房システムおよび近隣の揚水井2本におけるデータ取得システムの構築・整備を行った。各揚水井にはそれぞれ記録機能を備えた流量計と水位計を設置した。冷暖房システムではヒートポンプの運転状況,地中熱交換井の熱媒体温度・水位などを1分ごとに記録可能とした。また,試験期間における気象データは近傍に設置した気象測定システムでモニタリング可能とした。初年度の冷暖房システムの運転は7月の冷房期間より年度末まで行った。冬季には融雪を目的として運転される揚水システムによる地中熱交換井のCOP改善効果を観察した。その結果,地中熱交換井では地下水位が大きく低下したものの,地下水の移流と思われる効果によりCOPが最大で0.5程度増加し,顕著なエネルギー効率の改善が確認された。2. 秋田市平野における広域地下水流動系モデリングとポテンシャルマッピング本システムの設置適地選定のために,秋田平野における水文データ,地形データなどに基づき,地下水流動解析ソフトFEFLOWで3次元広域地下水流動系・熱輸送モデルを構築した。同モデルはフィールドにて測定した地下水位・水温データを用いて検定し,妥当性を確認した。そして,同モデルを用いてクローズドループ型およびオープンループ型の地中熱利用システムの設置適地マップを構築した。また,大阪平野におけるポテンシャルマップについても現在作成中である。
2: おおむね順調に進展している
フィールド試験において重要な揚水井は地元自治体(秋田県)の所有施設であり,計測装置の設置工事の認可と施工に若干の時間と技術的困難を要したが,2020年3月20日に固定式計測器の設置がすべて終了した。これ以前のデータについても一時的な計測器を用いて取得しており,信頼性が十分に高い揚水データを取得できたと判断される。ポテンシャルマップについては秋田平野でのマップの完成を加えて大阪平野についても,新規にマッピングに取り組んでおり,順調な進捗状況である。
今後は本年度実施した項目1と3に項目2を追加し,提案する地中熱利用システムの有効性を検証するとともに普及のための地中熱利用ポテンシャルマッピングを継続する。1. 秋田平野における冷暖房試験と数値モデリング --- 揚水による地中熱交換井のCOP改善効果を測定するために,秋田大学内に設置した地中熱利用冷暖房システムにおいて熱交換井挙動,冷暖房データ,揚水データなどの取得を継続する。揚水・および水位データは前年度2本の揚水井に設置した流量計と水位センサーを用いて記録を行う。これらデータにより,地下水位の低下に伴う熱交換能力の増加率を熱交換井で確認する。2. 冷暖房試験結果に基づく数値モデルの構築と感度計算 --- 秋田平野のフィールド試験位置の地質情報に基づき,揚水井を含む1辺2㎞程度の数値モデルをFEFLOWを用いて構築し,妥当性を計算値とフィールド試験結果との比較により検定する。検定後は以下のパラメータを変更させて,地中熱交換量を予測することにより本システムにおける最適な稼働条件・熱交換井配置を検討し,さらにシステム挙動の長期持続性を確認する。3. 国内複数地域における広域地下水流動系モデリングとポテンシャルマッピング --- 本システムの設置適地選定のために,秋田平野において地下水流動解析ソフトFEFLOWで3次元広域地下水流動系・熱輸送モデルの構築を継続する。また,本年度は新規に新潟平野と金沢平野についてもモデル構築を開始する。そして,数値モデルの計算結果より,各地域における地下水流速・水位・温度のコンターマップを作成し,これらをGISを用いて統合することにより,秋田平野における揚水データを考慮したGSHPポテンシャルマップを構築する。
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