研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、光触媒電極系の少数キャリアの表面への拡散をバンド構造の変調により促し、表面化学反応を促進する系を構築することである。本年度は酸素発生電極(BiVO4)のスパッタリング成膜プロセスの確立を目指した。このBiVO4はscheelite(monoclinic, triclinic)相, tetragonal相など多形を取ることが知られており、酸素発生能が他と比べ極めて高いmonoclinic scheelite単相構造(以下monoclinic)のみ作ることが求められる。そこで、BiVO4ターゲットの仕込み組成をBi2O3:V2O5=1:1, 1:1.5, 1:2に変化させ、成膜温度を変化させながらプロセス評価に取り組んだ。その結果、(1)投入電力が小さなときにはBiが優先的にスパッタされ膜組成がBiリッチになったが、投入電力が高いときにはBi, Vともに仕込み組成に近い割合でスパッタされる。(2)プリカーサ膜を作って酸素アニールする手法では、プリカーサ膜の成膜温度を室温まで下げた方が良質な膜が形成可能になる。(3)アニール温度を450℃以上にするとTriclinic相が混入する。この傾向は、BiVO4の相図(Bi2O3-V2O5系)に対応する。などの知見を得ることに成功した。X線回折、ラマン分光の構造評価においてMonoclinic相が優先的にできていることを確認し、最適なターゲット組成を決定した。その後、光電子分光にて価電子構造を確認し、Monoclinic BiVO4に対応することを確認した。蛍光スペクトルを確認したのち、Pt対向電極との間で光電極反応を試みたところ、反応の進行する様子が確認でき、当初計画した以上に進行した。
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