研究課題/領域番号 |
19H02656
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
櫻井 岳暁 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00344870)
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研究分担者 |
小澤 健一 東京工業大学, 理学院, 助教 (00282822)
池田 茂 甲南大学, 理工学部, 教授 (40312417)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水分解光触媒 / 少数キャリア拡散 / バンド傾斜構造 |
研究実績の概要 |
当研究課題では、水分解光電極系において酸素発生効率を高めるべくBiVO4薄膜をRFスパッタ法で製膜し、これに硫黄の混入を試みることで少数キャリアの拡散長を伸ばし、反応効率を高めることを目指している。前年度までにスパッタBiVO4薄膜の製膜プロセスの確立はできたものの、光電流としては50μA/cm2程度(1.23 V vs. RHE)しか存在しなかった。そこで今年度は、(1)BiVO4薄膜のスパッタリング条件の最適化、ならびに(2)BiV(O,S)4薄膜の成膜を試みた。 まず、BiVO4の製膜について、RF投入電力が低電力ではBiリッチな膜ができ、一方電力を100 W以上と高くすると化学量論組成に近づくことを前年度までに見出していた。ただし、電力の増加に伴い欠陥が増加したため、今年度はターゲット組成をBi:Vを1:2になるように調整したところ、低い投入電力で化学量論組成に近づく薄膜を製膜することに成功した。さらに、高温製膜と酸素分圧の制御により、光電流値が1.5 mA/cm2程度(1.23 V vs. RHE)の薄膜を成長させることに成功した。また、Photoluminescence強度と光電流値との相関を見出し、薄膜バルクの少数キャリア拡散長を伸ばすことが、水分解反応における酸素発生効率の改善に不可欠であることを明らかにした。100%の太陽光を利用した時には約6.5mA/cm2となると見積もられているため、次年度はさらに良質な製膜プロセスを確立するよう目指す。 続いて、(1)の研究成果をもとに、BiV(O,S)4膜の製膜を試みた。その結果、硫黄混入時にもターゲット組成をBi:Vを1:2になるように調整すると、化学量論組成に近い薄膜が形成可能になることが明らかになった。なお、硫黄混入により光吸収端が長波長シフトすることも確認し、狙い通りの薄膜を形成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本手法にて作成したBiVO4薄膜は、製膜プロセスの正しい理解と制御法の確立により、RFスパッタリング法としては世界最高水準の薄膜が製膜できた。液相プロセスにより合成した粉末と同等以上の高い量子効率の薄膜が製膜できたのは、想像以上であった。また同手法でターゲットに硫黄を混入した膜でも優れた結晶性を有していることが判明し、かつ光吸収帯の長波長へのシフトも確認された。以上の背景より、本手法が大規模光電極系製膜プロセスとして、有力であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
BiVO4薄膜ならびにBiV(O,S)4薄膜の高品質化、ならびにヘテロ接合作成により、光電流値を理論効率に近づけることを目指す。その中で、BiV(O,S)4薄膜では硫黄の混入量が増すと、酸素と硫黄のイオン半径の違いに基づき歪みが生じるため、最適な硫黄量を明らかにすることを目指したい。
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