研究課題/領域番号 |
19H02657
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松原 幸治 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20283004)
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研究分担者 |
Bellan Selvan 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (50785293)
長瀬 慶紀 宮崎大学, 工学部, 教授 (90180489)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 太陽エネルギー / 流動層式集熱器 / 蓄熱 / 実験 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、石英窓越しに集光を受け入れ、連続的に微粒子の流れを加熱する定常流型流動層式レシーバについて数値解析と実験を行った。 (1) 2次元数値解析によって、流動層内部の粒子とガスの流れを可視化した。Ansys Fluentを利用して固気二相流解析をレシーバに適用した。粒子流量が比較的少ない時、流動層内部で粒子の循環が観察された。しかし、粒子流量が大きくなると、多くの粒子は循環せず、流動層の表面を流れて排出される傾向が観察された。 (2) 実験では、流動層内の粒子に集光を照射して加熱する試験を行った。光源は、1kWth集光型太陽シミュレータである。ただし、出力を約80%に抑えて実験を行った。粒子は、主成分がアルミナであり、暗褐色に着色されている。最初に、流動層内の数点の温度の時間変化を計測し、集光照射から90分以降は温度変化が小さくなることを確認した。空気流量を30L/minに据え置いて、粒子流量を変化させた実験では、粒子流量を大きくすると粒子温度が低下する傾向がみられた。この時、粒子流量が20g/min以下の条件で、粒子温度が600℃を超えた。また、粒子流量を大きくするとき、粒子の集熱効率は約60%まで上昇する一方で、空気の集熱効率は約20%まで低下する傾向が観察された。 (3) 次に、粒子流量を据え置いて、空気流量を変化させた実験を行った。粒子流量を10g/minに固定した時、空気流量を小さくすると粒子の温度が上昇すること、しかも、流動層内部の粒子の温度分布が小さくなる傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
定常流型流動層集熱器の基本形状を完成することができた。これまでの実験では、空気量が多すぎて粒子の温度がそれほど高くならなかった。流動層の形状を刷新し、粒子を球形に近いものにすることで、空気流量を大幅に低減できるようになった。加えて、実験中に粒子の温度をモニタして、温度上昇に伴って空気流量を減らす技術を取り入れた。これは、空気の温度上昇によって空気が膨張するため、流動化を引き起こす空気質量流量が低下するためである。この技術によって、さらに空気流量を低下させることができた。このような工夫により空気流量を低減し、粒子温度を600℃以上に加熱できるようになった。既存の溶融塩では、熱分解の恐れがあるため560℃までしか加熱できない。それに対して、粒子を用いて600℃以上の加熱を安定にできたことは大きな進展である。 このような実験の進展に加えて、新たに3灯式集光型太陽シミュレータを導入できたことも進歩である。これまでの太陽シミュレータは6kWキセノンランプ1灯を備えており、約1kWの集光を照射できた。新しい太陽シミュレータは7kWキセノンランプ3灯を備える。この太陽シミュレータは、約5kWの集光を約7.5cmの円形スポットに集光できるよう設計されている。熱流束は1300kW/m2程度である。したがって、これまでの約4倍以上の熱量で、同等以上の熱流束での実験が可能である。ランプの光軸の角度は15°であり、集光角度は約60°である。したがって、レシーバに集光を取り込む際に問題はない。このように高温型太陽集熱の実験のための理想的な環境を構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
実験と数値解析を次のように進める計画である。 (1) 流動層の基本形状が完成して実験もある程度できたが、実験条件の振り方が不十分だったので、より多様な条件で実験する計画である。特に、空気流量を変化させた実験例が少ないので、これを増やして実験を行う。空気流量を減らした時、流動層内の温度分布が小さくなる現象が見られたが、この現象をより詳細に観察する計画である。また、一部の実験で石英窓が曇っており、一部のデータに異常値が見られた。新しい石英窓を導入したので交換して再実験する予定である。 (2) 数値シミュレーションは、これまでの2次元計算である程度予測ができるようになった。しかし、前後の壁の影響が大きいものと予測される。そこで、3次元シミュレーションによって前後の壁の影響も考慮した予測を行うことを考えている。3次元シミュレーションは計算時間が膨大である。しかし、少ないケースでも良いので、3次元シミュレーションを行う方針である。 (3) このように集熱の研究は進展したが、蓄熱の研究はこれからの課題である。顕熱蓄熱については、流動層の粒子として石英砂を用いて電気加熱して実験する計画である。2019年度に予備実験を行ったところエネルギー効率が不良であった。これは、流動層の容器にアクリルを用いたため熱が伝わりにくかったことが一因である。したがって、金属を用いて再実験する計画である。化学蓄熱の実験については、反応温度が高い酸化コバルトに変えて、より低い温度で反応する酸化金属で先ず実験する計画である。このような蓄熱の実験結果も考慮して、集熱と蓄熱を組み合わせたシステムを設計する方針である。
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