含ヒ素銅精鉱からの浮遊選別によるヒ素の分離は大変難しく、大きな課題であったが、安全な酸化還元剤(過酸化水素水や亜硫酸ナトリウム等)および銅捕収剤となるPotassium Amyl Xanthate(PAX)の添加により、銅鉱物(黄銅鉱等の初生硫化銅鉱、輝銅鉱等の二次硫化銅鉱)を沈鉱として、含ヒ素銅鉱物(硫ヒ銅鉱、ヒ四面銅鉱等)を浮鉱として極めて高い効率で分離できた。また、本現象の機構について、AFM表面観察などの各種表面分析方法によって検討し、銅鉱物は鉱物表面に親水性の水酸化鉄を生成する一方で、含ヒ素硫化銅鉱物はこれらが見られないためと推察した。本効果について、実精鉱試料、鉱石試料を用いても検討し、高い銅ヒ素分離効果が認められた。実操業においても効果的に応用できるものと考えられた。 含モリブデン銅精鉱からのモリブデンと銅の分離についても、従来使用されてきたNaHS代替物として、亜硫酸、ピロ亜硫酸ナトリウム(MBS)の添加について検討を行った。亜硫酸を添加した場合銅とモリブデンの分離が見られたが、MBSを添加した時に高い分離効率が得られ、特に海水を使用した場合に効果が顕著であった。また、pH調整に消石灰を用いることで、より分離効果が増大した。この効果は、純粋鉱物だけではなく、実精鉱試料を用いた場合についても見られた。表面分析や懸濁物の分析により、銅鉱物表面に親水性の沈殿物が生成し、一方で懸濁液中に生成するカルシウム沈殿物が輝水鉛鉱の凝集を抑制するためなどと推察された。また、精鉱においても本効果は確認され、実操業においても応用ができるものと考えられた。 銅鉱物とヒ素鉱物の分離、銅鉱物とモリブデン鉱物の分離を酸化還元剤を用いて統一的なモデルで説明し、また高い効率で分離ができた。これらの結果は、各種国内学会および国際学会において発表し、高い評価を受け、また各種特許を出願している。
|