海水中に希薄に溶存するレアメタルを高効率に捕集することができれば、大量の海水から実用に足りる量のレアメタルを回収することが可能になる。そのために高分子ゲルに吸着基を導入することによって高効率でレアメタルを吸着する吸着材を開発することが有効である。この吸着材を高効率化するために吸着効率を高くすることが必要である。この吸着効率を低くする要因の一つとして、室温程度の温度でもネットワークと吸着基はミクロなレベルでは激しく熱運動をしているので、吸着が熱運動によって阻害されていると考えられる。そこで高効率な吸着を実現するためにネットワーク中に剛直なファイバー状の物質を挿入することで熱運動を抑制することが有効ではないかと考えられる。そこで本研究では、カーボンナノファイバーをゲルに挿入したが、疎水性ファイバーがミクロレベルで凝集ネットワークを形成するためか、ゲルが剛直化するという現象が観察された。この様な状態ではネットワーク熱運動の抑制効果は限られたものになると考えられる。そこで、新たに親水基を導入したカーボンナノチューブを高分子ネットワークにミクロなレベルで挿入することが吸着効率に与える影響を明らかにすることとした。以前に導入した分散機を併用し、ミクロなレベルで分散されたカーボンナノチューブが導入された剛直化しない高分子ゲルの作製に成功した。このゲルでは動的光散乱測定によってネットワークの熱運動が抑制されたことが確認された。またICP-MS測定によって複数の元素に対する吸着量の増加を確認する事ができた。
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