研究課題/領域番号 |
19H02661
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
田中 徹 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20325591)
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研究分担者 |
郭 其新 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 教授 (60243995)
齊藤 勝彦 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 助教 (40380795)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中間バンド型太陽電池 / マルチバンドギャップ半導体 / テルル化亜鉛 |
研究実績の概要 |
太陽電池が将来のエネルギー源として中心的役割を果たすためには、変換効率の飛躍的な向上が不可欠であり、理論効率限界を打ち破る新しい概念に基づく超高効率太陽電池の開発が期待されている。本研究では、その候補の一つであるマルチバンドギャップ半導体を用いた中間バンド型太陽電池における光電変換機構を明らかにすることで、高効率化のための道筋を明確化し、その制御技術を確立することを目的としている。2019年度は以下の研究を実施した。 (1) 中間バンド→伝導帯の光励起効率を向上するためには、中間バンドの電子の占有確率を上げることが必要であり、この中間バンドへの電子ドーピングの有効な手法としてZnTeOへのCl添加を見出してきたが、ZnTeOにおいて中間バンドの状態密度はO濃度に依存するので、種々のO濃度に対するClドーピングの効果を明らかにする必要がある。そこで、様々なO濃度のZnTeOに対してClドーピングを系統的に行い、諸特性を明らかにした。 (2) ZnTeO中間バンド型太陽電池において、これまでの研究により、中間バンドに励起されたキャリアが熱または電界によって隣接した層の伝導帯に直接脱出し、二段階光吸収の低減と電圧低下を招いている可能性が考えられる。そこで今年度は、この中間バンドからのキャリアの脱出メカニズムを解明することを目的に、ZnTeO中間バンド型太陽電池の外部量子効率や二段階光吸収電流の温度依存性の評価を行うことで、脱出パスの検討を行った。 (3) 伝導帯に励起したキャリアの低エネルギーバンドへの緩和・再結合は効率低下の大きな原因であることから、この中間バンドを介した再結合を抑制するための手法について検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各項目ともに研究計画に沿っておおむね順調に研究を進めてきている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に得られた結果をもとにして、以下のように研究を進める。 ①中間バンド→伝導帯の光励起効率を向上するためには、中間バンドの電子の占有確率を上げることが必要であることから、前年度に引き続き、中間バンドの状態密度が異なる様々なO濃度のZnTeOに対してClの系統的ドーピングを行い、今年度は特に太陽電池の二段階光吸収電流との関係を明らかにする。その後、ZnCdTeOに対しても同様の実験を行い、効果を検討する。 ②前年度に引き続き、中間バンドに励起されたキャリアの隣接した層の伝導帯への脱出メカニズムを解明するため、ZnTeO中間バンド型太陽電池の外部量子効率や二段階光吸収電流の温度依存性や欠陥評価を行い、脱出パスの評価を進める。また今年度は,ZnCdTeOについても同様の実験を行い、ZnTeOとの比較を行う。 ③前年度に引き続き、中間バンドを介した再結合を抑制することを目指して、材料・構造設計の観点から、中間バンドに隣接して価電子帯への遷移が非許容となるようなエネルギーバンドの形成や、伝導帯から中間バンドへの遷移が非許容となる状態にすることができないか、理論的考察をすすめる。 ④伝導帯の障壁は光励起キャリアの輸送を阻害し、取り出し効率の低下を招く。従来のZnTeO/ZnTe構造の場合、0.3eV程度の伝導帯オフセットが存在するため、深い領域で生成された電子は中間バンドに緩和している可能性がある。ZnTeOの伝導帯はCdを添加しZnCdTeO四元混晶とすることにより低エネルギー側へシフトできることが申請者らの研究により明らかとなっているので、このZnCdTeOにClを添加することで中間バンドに電子ドーピングを行い、伝導帯オフセットが小さくなるよう設計した太陽電池を試作するにより、キャリア取出し効率への効果を明らかにする。
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