研究課題
当該年度は、昨年度から引き続き吸収顕微鏡の開発を進め、光合成光反応に関わる光化学系I(PSI)タンパク質の1粒子吸収顕微観測に成功した。光源として532 nmと670 nmのCWレーザーを導入し、以前より問題となっていた光源の強度揺らぎについては電気光学変調器(EOM)を組み込んだフィードバック型の光強度安定化デバイスを用いて抑制した。光学系の振動については、空気バネ付きの光学定盤に系を構築し、空気圧で浮かせて除振することで抑制した。また、装置に組み込む光学素子やホルダーを見直すことで散乱の影響を減らした。光学素子の波長特性を再検討し、光源のスペクトル揺らぎも極力乗らないようにした。さらに、光学チョッパーを導入してロックイン検出することでS/Nを向上させた。色素ビーズの1粒子観測で測定条件を最適化し、最終的にOD=10^-5レベルの微小な吸収信号を測定できるようになった。そこで、光合成の光電変換反応を担うPSIタンパク質の三量体粒子を用いて1粒子吸収イメージング測定を行ったところ、S/N=3程度で吸収像を得ることに成功した。この成果を第77回日本物理学会で報告した。PSI単量体当たり約100個のクロロフィル色素分子が結合しており、PSI三量体では300分子程度になる。従って、現行の装置で100分子程度の吸収量が検出可能である。ロックイン検出に改善の余地が残されており、更なる検出感度の向上が可能である。これと並行して空間光位相変調器(SLM)を用いた干渉検出系の開発も進め、光の位相制御には成功している。吸収顕微鏡に組み込むには更なる開発および改良が必要だが、上述したロックイン検出の改善点と併せ、吸収検出感度の向上に利用できると考えている。以上のように、高感度吸収顕微鏡を構築することができ、1分子吸収検出に向けて大きく前進した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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