研究実績の概要 |
2次元層状物質であるFeSeにアルカリ土類金属原子を導入した化合物において、常圧での超伝導相が複数あることを明らかにした。また、圧力下において、常圧の超伝導相とは異なる高圧超伝導相が出現することを見いだした。 常圧では超伝導特性を示さないトポロジカル絶縁体に圧力を印加して新規な超伝導相を実現し、超伝導と結晶構造との相関を調べた。たとえば、トポロジカル絶縁体であるSb2Te3-ySeyに関しては、xとyの値を変えることでフェルミレベルを制御でき、それに伴って超伝導が出現する圧力が変化することがわかった。トポロジカル絶縁体Sb2Te3-ySeyの超伝導は、「トポロジカルに非自明な超伝導」である可能性を超伝導転移温度の磁場依存性から見いだした。関連した研究として、Pd1-xPtxBi2、BaBi3やKBi2, RbBi2について圧力下での超伝導特性に関する研究を行って、圧力下での超伝導と結晶構造との関係を詳細に調べた。更にCaIr2やCaRh2のようなスピン軌道相互作用が大きい元素であるIrやRhを含む化合物において、超伝導転移温度に特徴的な圧力依存性があることを見いだした。 BaTi2(Sb1-yBiy)2Oにおいては、y = 0.18において、高圧で新規な超伝導相が出現するという「ダブル―ドーム型の超伝導相図」を得た。新規な高圧超伝導相の出現は、c軸方向の急激な縮小(collapse transition)によることがわかった。yが大きくなると、そのようなcollapse transitionは起こらず、高圧超伝導相は出現しない。 また、トポロジカル絶縁体であるbeta-PdBi2の蛍光X線ホログラムによる局所構造解析の研究を行って、結晶中でのPd原子面の静的ディスオーダーの存在についての知見を得た。現在、圧力下での蛍光X線ホログラム測定に向けた研究を展開中である。
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