研究課題
キャリアの電荷に加えてスピン自由度も利用する 「スピントロニクス」 は、高性能な情報処理を実現する次世代テクノロジーとして期待されており、スピン 偏極電子の生成・制御の機能物性研究はスピントロニクス技術開発の中核を担う。そして現在、これらスピン偏極表面電子に備わった機能性を実験的に引き出す時代に突入しており、その中でも超高速な光学遷移を動作原理とした「光スピン制御」を制御法とする「光スピントロニクス」が注目を集めている。本研究では,波数分解しながらスピン・電子構造を直接観測できるスピン波数分解光電子分光 (SARPES) とポンプ・プローブ法を加えた時間・スピン・波数分解光電子分光 (tr-SARPES) を用いて,光励起されたスピン・電子ダイナミクスをフェムト秒スケールで分離しながら追跡することで,光スピン制御に関する本質的な機能物性の理解を目指している。本年度では,プローブ光 10.7eV の極紫外光発生に利用している Xe ガスセルチャンバーの大幅な改良を行った。その結果,問題であったLiF 結晶窓の劣化を改善することに成功して,長期的に安定化して測定ができるようになった。
3: やや遅れている
当初の予定では,本研究で開発する時間・スピン・波数分解光電子分光装置で Bi2Se3 や Sb2Te3 などトポロジカル物質の測定を行う予定であった。しかしながら,プローブ光 10.7eV 発生で利用する強力な紫外光によって光学素子のダメージがあり,その対応に追われた。本年度でその問題は解決したが,これから測定を始める段階であるため,当初の予定からやや遅れている。
Bi2Se3 や Sb2Te3 などのトポロジカル物質におけるスピン偏極表面状態のスピンダイナミクスの測定を行う。特に,Sb2Te3 ではその表面状態のエネルギー位置はフェルミ準位より高エネルギーに位置ているため,従来の波数分解光電子分光やスピン・波数分解光電子分光では困難であったため,Sb2Te3 の非占有表面状態のスピンテクスチャーを決定し,開発した時間・スピン・波数分解光電子分光の威力を実証したい。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
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https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=10729