本研究では、プロトン加速器から得られるミュオンが電子を捕獲して生成するミュオニウム(Mu)を活用して、通常の化学的手法では得られない常磁性種の創成を目的とした。まず、リン複素環一重項ビラジカルにMuが付加して対応するラジカルが生成することを明確に観測し、その位置選択性がビラジカルの電子状態や結晶構造に依存することを明らかにした。次に、アントラセンのリン類縁体への位置選択的Mu付加を見出し、ミュオンの軽同位体効果によって準安定な共役電子系が形成されることを突き止めた。一方で、Mu付加によるイミドイルラジカル生成を初めて観測し、さらに高周期カルボニルから特異な開殻パイ共役系構造をつくり出した。
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