研究課題
初年度として,①電気化学光電子分光(EC-XPS)による電極電位に応じた金属イオン空間分布測定,②分子動力学(MD)計算による電極電位に応じた金属イオン空間分布解析とEC-XPSとの整合性評価の2つを中心に研究を進めた。①については,二次電池のエネルギーキャリアとなり得るMg2+イオンを溶質とするイオン液体(IL)電解液の液滴をAu(111)電極上にのせて3極系を形成し,電極にpzc(potential of zero charge)から電位を印加して電荷をもたせたときに,液滴の周辺薄膜領域での組成変化をEC-XPSで測定した。予想通り,光電子信号の検出深さの制限により薄膜領域でのみ電極電位応答がみられ,例えば,電極が負電荷をもつ負の電位では,Mg2+イオンが電極と接する深い界面に引き寄せられると同時にバルク領域からの拡散によって薄膜領域にも運ばれることが明らかとなった。同時に,ILを構成するカチオン/アニオン比も変化する。また,電極が反対符号をもつ電位では,Mg2+イオンが薄膜領域からバルク領域へと拡散することも確認された。さらにこれらの変化にはヒステリシスも観測された。②については,MD計算により,(i)真空/IL界面がIL/電極界面での挙動に影響を与えるか(膜厚依存),(ii) バルク量の液体に埋もれた界面と薄膜界面とでは電位応答は同じなのかについて検証を行った。その結果,典型的ILの場合,IL層の厚みが2 nm以下になると,グラファイト電極上でのイオン液体の配向や拡散挙動に顕著な変化が見られることが分かった。つまり,2 nm以下についての①の実験の解析に,この点を考慮する必要があることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
EC-XPSでの実験,MDでの界面解析ともに,初年度としての目標は十分達成することができた。特に実験については,系の効率的で再現性の高い構築法の見通しが立ち,Au(111)電極だけでなく,実用上も重要なグラファイト電極での解析にもめどが立った。
EC-XPSでの実験,MDでの界面解析については,次年度も引き続き実験・解析を進める。それに加え,2020年度には,当研究グループで開発してきた,電気化学角度可変遠紫外全反射吸収分光(EC-FUV-ATR),電気化学周波数変調原子間力顕微鏡(EC-FM-AFM)を用いた界面解析についても進め,多角的な界面Operando解析を進める計画である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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