昨年度までに反芳香族コア置換イソフロリン誘導体の詳細な発光特性の評価を行い、発光波長端が1000 nmを超えるS1発光と可視領域のS2発光を示す二重発光特性を明らかにしている。今年度は、本研究課題の主たる目的である反カシャ二重発光特性と反芳香族性と相関関係を明確にすることを目指した。異種骨格間では反芳香族性の定量的評価が困難であるため、骨格をイソフロリンに限定し、種々のイソフロリン誘導体を合成し、その反芳香族性と発光特性を評価した。その結果、反芳香族性を示すイソフロリンはすべて反カシャ発光特性を示したのに対し、反芳香族性を示さない非芳香族イソフロリンは、発光特性を示さなかった。このことから、反カシャ発光特性が発光特性に重要であることが示唆された。この傾向はDFT計算からも支持された。以上より、反芳香族ポルフィリノイドから、有機物で他に比類のない希土類錯体のような特異的発光特性を実現した。今後、単純なπ拡張では達成が困難なより近赤外領域で発光する色素の創成や、多重発光特性を利用した応用研究が期待される。
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