研究課題/領域番号 |
19H02690
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
御崎 洋二 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90202340)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 二次電池 / 正極活物質 / 有機材料 / ドナー / アクセプター |
研究実績の概要 |
(1) 二分子のナフタレンテトラロンがTTFの両側に融合した分子(1)をリチウム塩として合成することに成功した。前駆体のX線構造解析に成功し,分子骨格が高い平面性を持つことを明らかにした。1のリチウム塩を正極活物質として用いたリチウムイオン電池の予備的な充放電試験を行ったところ,初回の放電容量は267 mAh/gであった。理論容量と比べて低い容量しか出てない原因としては,4個のp-ベンゾキノン(BQ)部位の電子求引性によりTTF部位が関与する酸化電位が向上し,10電子分の充電が作用電圧範囲内で行われてないためと考えている。今後,電解液の構成成分を検討することにより高電圧での充放電試験を検討する予定である。 (2) 高容量化,溶解度の低下によるサイクル特性の向上,導電性の向上による活物質配分量向上を目指し,融合型TTF三量体の両側にp-ベンゾキノン(BQ)が融合した融合型ドナー・アクセプター分子(QTTPYQ)を新たに開発した。QTTPYQを正極活物質として用いたリチウムイオン電池(QTTPYQ/Li)の充放電試験を行ったところ,初回の放電容量は211mAh/gであり,10電子利用における理論容量(374 mAh/g)の56%,6電子利用における理論容量(224 mAh/g)の94%であった。低い利用率(10電子利用の56%)の理由としては,QTTPYQの還元電位が負側へシフトすると同時に最高酸化電位も正側へシフトしているためにBQ及びTTF部位のすべてを利用した充放電が作用電圧範囲内で行われてないためと考えている。 (3) TTF-BQダイアッドをシグマ結合で連結したダイマー (2)の合成に成功した。2を正極材料として用いた二次電池(2/Li)の充放電特性について検討したところ、初回放電容量が201 mAh/g、初回放電エネルギー密度は583 mWh/gであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
標的分子のうち,二分子のナフタレンテトラロンがTTFの両側に融合した分子(1) をリチウム塩として合成することに成功したこと,および TTF-BQダイアッドをシグマ結合で連結したダイマー分子 (2)の合成に成功したことなど、当初計画どおりに順調に合成研究が進んでいる。さらに、融合型TTF三量体(TTPY)の両側にp-ベンゾキノン(BQ)が融合した融合型ドナー・アクセプター分子(QTTPYQ)といった当初計画になかった新規分子系の合成にも成功している。これらの結果を基に引き続き研究を進めることにより,さらに高性能な正極活物質分子の開発研究を進展させることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書に記載した標的分子,特にナフタレンテトラロンがTTPに縮合した分子の合成に着手する。QTTPYQから一分子のTTF部位を欠損させたQTTPQの合成に新たに取り組む。合成経路に関しては,これまでの研究成果により得られた結果をフィードバックさせることによって最適化を検討する。また,アニオン部位を有する自己ドープ型分子系の合成に着手する。令和3年度中に合成に成功した分子について,易溶性誘導体の酸化還元挙動の解明を行うと共に,難溶性誘導体を共同研究者に供給し,それらを正極活物質としたコイン型二次電池の作製と充放電特性の評価を行う。
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