研究課題
(1) 高容量化,溶解度の低下によるサイクル特性の向上,導電性の向上による活物質配分量向上を目指し, p-ベンゾキノン(BQ)の両側にTTFが融合したドナー・アクセプター分子(TTF-Q-TTF)を新たに開発した。そのビス(エチレンジチオ)誘導体を正極活物質としたリチウムイオン電池の充放電特性について検討したところ,初回満放電容量が117 mAh/gを示し、六電子利用時の理論容量(250 mAh/g)の46%であった。平均電圧は3.23 V、初回放電エネルギー密度は377 mWh/gであり、容量及びエネルギー密度は小さいもののTTF-TTF-BQ融合型分子であるTTPQ (2.86 V)よりも高電位化に成功した。(2) 高電位化によるエネルギー密度の向上,導電性の向上による活物質配分量向上を目指し,TTFの両側にテトラシアノキノジメタン(TCNQ)が融合したドナー・アクセプター分子(TCNQ-TTF-TCNQ)を正極活物質としたリチウムイオン電池の充放電特性について検討したところ,初回満放電容量が224mAh/gを示し、六電子利用時の理論容量(244 mAh/g)の91%,初回放電エネルギー密度は691 mWh/gと良好であった。しかしながら,20回後の放電容量は初回の27%であり,改良の余地がある。TCNQのうち1つをTTFに置き換えた分子を新たに合成し,現在充放電試験中である。(3) TTPQのTTF末端にBQが融合したQ-TTP-Qの合成に成功した。この分子の理論容量(397 mAh/g)を考えると,理論容量の90%程度の容量が出れば1,000 mWh/g)を超えるエネルギー密度が期待される。また,TTPQが高導電性を示すことからQ-TTP-Qにおいても高導電性とそれに基づく活物質配分量の向上が期待される。
2: おおむね順調に進展している
昨年度,新たに標的分子として設定したQ-TTP-Qの合成に成功したばかりでなく,TTF-Q-TTF,TCNQ-TTF-TCNQ融合分子系といった当初計画になかった新分子の合成にも成功している。これらの結果を基に引き続き研究を進めることにより,さらに高性能な正極活物質分子の開発研究を進展させることが期待できる。
2021年度合成に成功したQ-TTP-Qを正極活物質としたコイン型二次電池の作製と充放電特性の評価を行う。また,研究計画調書に記載した標的分子,特にBQ-TTF-TTF-TTF-BQペンタド (Q-TTTPY-Q),およびナフタレンテトラロンが拡張TTFに縮合した分子系の合成に引き続き取り組む。合成経路に関しては,これまでの研究成果により得られた結果をフィードバックさせることによって最適化を検討する。2021年度,合成に成功したTTF-BQ-TTFの置換基の修飾を行い,さらなる電池性能の向上を図ると共に,3分子のBQと2分子のTTFが交互に融合したペンタド (Q-TTF-Q-TTF-Q) の合成に取り組む。
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