研究課題/領域番号 |
19H02711
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
穐田 宗隆 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (50167839)
|
研究分担者 |
田中 裕也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (90700154)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | フォトレドックス触媒 / 超分子触媒 / フルオロアルキル化 |
研究実績の概要 |
本年度は、反応開発、反応機構解析、不斉反応の観点から進展が認められた。 反応開発の点では、フルオロアルキル基を有するスルフィン酸塩と不飽和炭化水素の反応を検討した。スルフィン酸塩は一電子還元、脱SO2反応を経て有機ラジカルを生じることはよく知られているが、本反応系ではフルオロアルキル基のみならず、SO2分子がオレフィンに対して1,2-付加して増炭したスルフィン酸を生じ、これをアルキル化することによってスルホンに誘導することに成功した。本反応はアセチレンに展開することも可能で、原子効率の高い反応開発に成功した。 さらに、フォトレドックス触媒反応のみならず可視光照射のエネルギー移動を経る反応開発に展開した結果、N-アリールベンジリデンアミノピリジニウム塩のイリジウム触媒共存下での可視光照射により、C=N二重結合のトランス-シス異性化を経る二つのアリール基の接近、続くアリール基間の電子移動を経るピリジンの脱離と生成したラジカル種の環化を経てフェナントリジンが生成することを見出した。エネルギー移動反応はフォトレドックス触媒作用と同様な触媒を使用するものの反応機構はまったく異なっており、今後の発展が期待される。 さらに不斉反応に展開するべく、銅フォトレドックス触媒とBINAP配位子の反応を検討し、反応の進行を確認した。 フォトレドックス触媒作用の反応機構を解明するために、学習院大学の岩田教授のグループと共同研究を行って、閃光分解法によって、短寿命の一重項励起種が生成していることと、これが活性種となることを確認し、従前からの申請者らの制定反応機構の蓋然性が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで研究を受けて、「研究実績の概要」欄にも書いたとおり反応開発、反応機構解析、不斉反応の観点から二次元的に拡がった研究をそれぞれ探求することによって三次元的に研究が深化し、最終年度に向けて研究目的の達成を下支えする基盤が固められた。また、研究目的の一つである不斉反応に向けて予算の繰越しを行った結果、順調に研究は進行し、当初期待した以上の成果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで開発してきた強還元力有機フォトレドックス触媒の性能を発現できる反応系の探索を行う。求電子的な前駆体からのラジカル種を発生を効率的に行うために、(1)これまで開発してきた有機フォトレドックス触媒の高機能化、(2)より汎用的な前駆体の開発、(3)これらの機能を最大限発揮できる反応系の開発に重点を置いて研究を進める。 具体的には、(1)では置換基導入ならびに超分子触媒系の改良にによる活性向上を図り、(2)ではフルオロアルキルラジカルに限らず一般的なラジカル種の発生に挑戦し、(3)ではケトンやスルホンなどを含む官能基化された化合物への展開を図る。
|