研究実績の概要 |
多価カルボン酸の水素化を効果的に促進するIr錯体触媒の開発にも成功した。このIr錯体はPNNNP型配位子を有する配位飽和型の金属錯体である。より高温(160-200度)・高水素圧(4-8 MPa)条件下でもその頑健な触媒構造を維持できるため、酸素や窒素などで高官能基化され触媒毒になりやすい多価カルボン酸の水素化でも触媒活性を失いにくい。単素数がC2, C5, C6, C7, C8, C9, C13の二価カルボン酸を全て問題なく相当するジオールへと高収率で変換できた。一価カルボン酸も問題なくアルコールへと水素化できた。既存の金属錯体触媒を用いるエステルの水素化でMeOHを溶媒として用いた場合、触媒が失活することも多く見られるが、本系では(PNNP)Ir錯体の高度に嵩高い構造も手伝い、MeOHはむしろカルボン酸を系中でメチルエステルに変換するための有利な溶媒として使用できた。酢酸の水素化からエタノールを合成することも可能となったことから、お酢からお酒を作ることに成功したともいえる。本成果はACS Catalに掲載済みである。Editor's Choiceや雑誌のFront Coverにも選ばれ、Most Read Articleの一つとしても数ヶ月間その地位を保っている。また(PP)Ru錯体を用いる高活性水素化触媒を目指した研究も、二座リン配位子の二つのリン原子をつなぐ炭素鎖をC4(ブチル基)にし、リン上のAr基を3,5-ジメチルフェニル基にすることによって、過去最高のTON(~1500)を達成した。その成果も高く評価され、Bull. Chem. Soc. Jpn.のSelected PaperおよびInside Front Coverとしても採用された。
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