研究課題/領域番号 |
19H02715
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 健一 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80293843)
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研究分担者 |
榊 茂好 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 研究員 (20094013)
原 賢二 東京工科大学, 工学部, 教授 (10333593)
新林 卓也 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (90824938)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水素 / 均一系触媒 / 不均一系触媒 / イリジウム / 脱水素化 |
研究実績の概要 |
水素社会構築の観点から、水素は理想的なエネルギー源として注目されており、持続可能な水素製造法の開発が求められている。このとき、再生可能かつ持続的に大量供給可能な原料を用い、省エネルギー条件下での水素製造を実現する必要がある。本研究では、水素製造の原料としてアルコール性有機化合物に注目し、これらの脱水素化によって実用化に耐えるレベルの水素製造法を開発することを目指している。また、水素社会構築に必要な基盤技術として、水素貯蔵法の開発も重要である。本研究では、有機ハイドライドを活用する水素貯蔵に注目し、既存の社会インフラを最大限有効活用することにつながる水素貯蔵法の開発にも挑戦する。なお、本研究課題は、専門分野を異にする4人の研究者の参画の下に遂行している。 本年度はまず、ポリスチレンをはじめとする高分子鎖内に埋め込んだ機能性配位子を利用してイリジウム錯体を固定化し、回収再利用を可能にする高性能触媒を創製することに取り組んだ。その結果、機能性高分子配位子の合成に成功するとともに、これを導入した新規錯体触媒を得た。本新規錯体触媒を用いたアルコールの脱水素化反応の開発にも着手し、前途有望な結果を得ている。 続いて、機能性配位を有するイリジウム錯体触媒をシリカゲルに固着させる新規手法を開発した。本法により得られた不均一系触媒は、有機分子の脱水素化反応に触媒活性を示すことが明らかとなり、簡単な器具による濾過で回収可能であることも見出した。 さらに、自然界から継続的に入手できる持続可能資源であるセルロースを水素製造の原料として用いる触媒系の開発に取り組んだ。イリジウム錯体触媒とイオン液体を利用することによって、セルロースからの効率的な水素製造を達成した。また、アルコール性有機資源の脱水素化反応に関し、計算化学に基づいた詳細解明に着手し、使用する触媒の特性に応じた反応経路を明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の当初の研究実施計画は、1)「錯体触媒の固定化による不均一系触媒への展開」と題し、固体の担体表面や高分子配位子と金属との結合に基づいて、実用性の高い新規な不均一系触媒の合成に取り組むこと、ならびに、2)「触媒的脱水素化の計算化学的考察」と題し、触媒的脱水素化反応における素過程を計算化学の手法に基づいて電子論的に解明すること、といった内容であった。これらいずれについても、「研究実績の概要」に記載したとおり、本研究課題の目的に沿った成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は引き続き、イリジウム錯体を固定化して得られた新規不均一系触媒を用い、水素製造反応や有機分子の脱水素的変換反応において活用することに取り組みたい。さらに、有機ハイドライドを活用する水素貯蔵を目的とした新規脱水素化触媒系の開発、高度な触媒構造設計を基盤とする高機能性脱水素化触媒の開発も行う計画である。加えて、現在進めている脱水素化反応に関する計算化学的考察を一層深め、高性能触媒の設計の基礎情報として発展させることにも取り組む。
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