研究課題
カーボンを触媒として利用する有機合成反応の開発は,2010年頃に研究が展開された新しい分野である。そのため,反応メカニズムや活性点に関して未解明な点が多く,カーボン触媒の開発は試行錯誤に頼っていた。本研究では,カーボンやそのモデルとなる低分子に対して化学修飾により官能基やラジカルを付与して触媒性能を評価することにより,触媒活性が発現するメカニズムを解明した。本年度は,グラフェンに窒素元素をドープするとともに,ラジカルの量を増やしたカーボン触媒を創出し,ニトロ基の還元反応に適用した。従来のパラジウム触媒や白金触媒とは異なる選択性を示し,炭素触媒特有の性質が明らかとなった。また,トルエンが脱水素カップリングする反応においても,ラジカルが寄与している可能性を提示した。この反応においては,ラマンスペクトルにより,高結晶性の炭素ではなく,欠陥を多く有する炭素材料が優れた触媒活性を有することが分かった。また,炭素触媒の構造を模した分子を用いて反応性を評価することにより,トランスアルケンが触媒活性に寄与していることも示した。
1: 当初の計画以上に進展している
ラジカルが炭素触媒の活性に関係していることを明らかにし,水素化やカップリング反応に展開することができた。現在,CO2を原料に用いる新たな触媒反応を見出しており,当初の計画以上の成果が得られている。
触媒構造と活性の相関の解明を行い,さらに活性の高い触媒の開発や新反応の開発に努める。また,低分子模擬触媒による活性点の決定を行い,この分野を分子化学で議論できるレベルに昇華する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 備考 (1件)
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http://www.tt.vbl.okayama-u.ac.jp/