研究実績の概要 |
昨年、二官能基化アルキンである1,n-アルキニルケトンや1,n-アルキニルエポキシドに対し、gem-二クロムアルカンを作用させると、環化反応が起こり、シクロアルカンもしくはシクロアルケン誘導体が得られることを見出した。本年は、まず、生成物の一つの立体化学を含む構造をX線結晶解析により明らかにすることに成功した。これにより、アルキン-カルベンメタセシスの過程で、立体化学が保持されることを確認できた。また、配位子の使用や活性種の添加方法を含め、様々な検討を行い、反応性や幾何異性体の生成割合の制御を目指したが、収率は20%程度と低い値に留まり、得られた結果を論文として投稿できる形に仕上げることはできなかった。他にも1,n-ジインの環化を伴う不斉非対称化反応を利用し、環化体にキラリティーを誘起できないか検討したが、鏡像体過剰率は非常に低い値であった。また、新たな取り組みとして、活性種の寿命を考慮し、マイクロフローシステムの利用により、反応性や選択性を向上できないか検討した。しかし、金属活性種の溶解性が問題となり、こちらの取り組みでもよい結果が得られていないのが現状である。ジアミン配位子を工夫することで活性種の溶解性を向上できないか現在検討しており、この取り組みは今後も継続して行っていく予定である。
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