研究課題/領域番号 |
19H02721
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西村 貴洋 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50335197)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | C-H活性化 / 触媒 / 不斉合成 / ヒドロアリール化 / イリジウム / ロジウム / 付加反応 |
研究実績の概要 |
今年度は,遷移金属触媒を用いたC-H結合の活性化を伴う有機分子変換反応開発を目的として以下の課題を検討した。 (1)反応性と選択性を同時に実現する高活性触媒の創製:ホスフィン・オレフィンからなるハイブリッド型配位子を用いたイリジウム触媒による芳香族C-H結合のビニルエーテルへの不斉付加反応における基質適用範囲の調査と反応機構に関する研究を行った。また、芳香族イミンの直接C-Hアリル化反応が、イリジウム触媒によって効率よく進むことを明らかにした。一方、ロジウム触媒を用いて芳香環に置換基を持つインデン誘導体へのアリールボロン酸の不斉付加反応を行い、C-H活性化により生じたアリールロジウム種のプロトン化が触媒再生に重要な経路として含まれることを明らかにした。 (2)C-H結合の付加における位置およびエナンチオ選択性制御:イリジウム触媒を用いたN-メチル基C-H結合のトリフルオロメチル基をもつ1,1-二置換アルケンへのエナンチオ選択的付加反応における基質適用範囲の調査を行った。2-アミノピリジンから誘導されるN-メチル基の反応性は、3位の置換基に大きく依存しており、エステル、アミド、クロロ、トリフルオロメチル基などの電子求引基が反応の進行に必須であることが新たにわかった。また、パラジウム触媒によるアリル位置換反応とカチオン性イリジウム触媒を用いた分子内ヒドロアリール化反応をワンポットで行う新たな触媒系により、ジヒドロベンゾフランの不斉合成手法を開発した。 (3)連続C-H活性化による分子変換法の開発:窒素原子に隣接するメチル基を1,5-および1,6-ジエンを用いて連続的かつ複数回のC-H活性化によってアルキル化し,炭素5および6員環を骨格を構築する新反応における不斉合成への展開を行った。エナンチオ選択性は基質によって左右されるが、80% eeを超える選択性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に対する成果を示す。 (1)反応性と選択性を同時に実現する高活性触媒の創製:ヒドロキソイリジウム/キラルホスフィン・オレフィン触媒を用いた、ベンズアミド類のビニルエーテルによる不斉アルキル化反応について、基質適用範囲の調査が終わり、研究成果を論文投稿に向けてまとめているところである。また、芳香族イミンの直接C-Hアリル化反応の研究成果は、学会発表し論文投稿した。一方、ロジウム触媒を用いたインデン誘導体へのアリールボロン酸の不斉付加反応の研究成果は、論文に掲載された。 (2)C-H結合の付加における位置およびエナンチオ選択性制御:イリジウム触媒を用いたN-メチル基C-H結合のトリフルオロメチル基をもつ1,1-二置換アルケンへのエナンチオ選択的付加反応については、論文投稿に向けたデータ収集がほぼ完結している。反応機構に関する研究を行い、2021年度中に論文投稿する予定である。また,カチオン性イリジウム触媒を用いた分子内ヒドロアリール化反応によるジヒドロベンゾフランの不斉合成手法に関する研究成果は,学会で発表し学術雑誌にも掲載された。 (3)連続C-H活性化による分子変換法の開発:カチオン性イリジウム触媒存在下,N-メチル基と1,5-および1,6-ジエンの反応を行うと連続的かつ2回のC-H活性化を経るアルキル化がおこり,炭素5および6員環をもつアミンが生成することを明らかにした。不斉配位子を用いたエナンチオ選択的合成にも成功しており、その成果の一部を学会で発表した。2021年度中に論文投稿する予定である。 以上のように,本研究はおおよそ当初の計画通りに進んだと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)反応性と選択性を同時に実現する高活性触媒の創製 :ホスフィン・オレフィンからなるハイブリッド型配位子が、イリジウム触媒によるC-H活性化において優れた触媒活性と立体選択性を発現することを見出した。本年度は、その知見を発展させ、見出した触媒系を様々なC-H結合活性化を伴う反応へ適用し、その活性と選択性を調査する。 (2)C-H結合の付加における位置およびエナンチオ選択性制御:イリジウム触媒を用いたトリフルオロメチル基をもつ1,1-二置換アルケンへのN-メチル基C-H結合のエナンチオ選択的付加反応における反応機構に関する研究を行う。また、その他の1,1-二置換アルケンへの付加におけるエナンチオ選択性を向上し、α-アミノ酸の不斉合成へと展開する。 (3)連続C-H活性化による分子変換法:ヘテロ原子に隣接するメチル基を連続的かつ複数回のC-H活性化によってアルキル化し、より大きな炭素数を持つ鎖状または環状化合物を合成する新規手法の開発を進める。主に、不斉反応におけるエナンチオ選択性の向上をめざす。また、アルケンの異性化による反応活性基質の発生とそのアルケンへのC-H結合の直接付加反応を検討する。 (4)レドックスニュートラル型キラルビアリール合成法の開発:ベンゾキノンへのC-H結合の付加反応を行い、自発的な芳香族化によるビアリール合成法を開発する。まずは、反応に有効な触媒系を探索する。
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