研究実績の概要 |
本研究では、様々な生物活性糖質の部分構造として見られるメソジオールに対して、水酸基の結合位置を予測・制御しながら、位置および1,2-cis-立体選択的に配糖化する新規非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化反応の開発と有用生物活性糖質の全合成への応用を主目的としている。申請者は、本研究の初年度の研究で、具体的に以下の成果を得た。 【2019年度までの研究成果】 (i)メソジオールとして、myo-イノシトール(Ins)保護体を選択し、1,2-アンヒドログルコースとのグリコシル化反応を、ボロン酸触媒を用いて検討した。その結果、望みの非対称化型1,2-cis-グリコシル化反応が進行し、Glcα(1-6)Insが高収率かつ単一異性体として得られることを初めて見出した。(ii)次に、種々の1,2-アンヒドロ糖を用いて検討した結果、全ての場合において、DFT計算で予測された結合位置で反応が進行することを見出した。以上の結果より、本手法が、メソジオールに対して、水酸基の結合位置を予測・制御しながら配糖化できる、これまでに類例のない非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化反応であることを明らかにした。 【本年度の研究成果】(i)本研究で開発した非対称化型1,2-cis-立体選択的グリコシル化反応を鍵反応とし、抗生物質LL-BM782類の合成研究を行った。その結果、既知の合成中間体までの合成を達成し、提唱されていた天然物のマンノシド結合がManβ(1-4)Insであることを明らかした。(ii)また、本手法を用いてグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)及びホスファチジルイノシトールマンノシド(PIM)の重要鍵中間体の合成を達成した。(iii)さらに、本手法が数種類の鎖状メソジールにも適応可能であることを見出し、本手法の基質一般性の拡張に成功した。
|