研究実績の概要 |
1-(2-(2,2-ジメチル-6-メチレンシクロヘキシルエチル)-2-ヨードベンゼン①のパラジウム触媒を用いた分子内環化反応を炭酸セシウム、トリイソプロピルシリルフェニルスルフィド(TIPSSPh)存在下に行うと、連続反応が進行し、縮環部にフェニルチオメチル基の結合した全炭素四級不斉中心をもつ三環式骨格が生成することを見出した。パラジウム触媒として(IPr)Pd(allyl)Clを用いることが必須であり、トルエン中50℃では反応は進行しなかったが、100℃では進行し、環化体を29%で得た。また、2等量のN,O-ビストリメチルシリルアセトアミド(BSA)の存在下では、収率は53%となった。シス/トランスの生成比は、1/1であったものの、本反応は前例のない反応であり、パラジウムを用いたベンジル位全炭素四級不斉中心形成を伴うインドリン骨格構築の反応は、パラジウムを用いた①の環化反応にも適用可能であることを実証した。 そこで多段階合成が必要な①の代わりにN-(2-ヨードフェニル)-N-メチルメタクリルアミド②を基質として用いた新反応を検討した。その結果、上述の反応条件を用いて②とTIPSSPhの反応を一酸化炭素雰囲気下で行ったところ、ベンジル位全炭素四級不斉中心形成を伴う環化に続くフェニルチオエステルの形成がおこることを見出した。この反応は溶媒をTHF、塩基をCsFとして行うと収率は94%となり、アルキルチオエステルの合成にも適用可能であった。基質からカルボニル基を除くと反応の進行は遅く、環化に140℃を要することが分かった。別の基質でも反応が進行しジヒドロピラン環が形成したことから、①でも同様の反応が進行すると予想される。この反応の検討中、進行しないと報告されていた酸フッ化物とTIPSSPhの反応が、CsFの存在下ではパラジウム触媒無しでも高収率で進行することを見出した。
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