研究課題/領域番号 |
19H02731
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平岡 秀一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10322538)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超分子化学 / 自己集合 / 自己集合過程 / 準安定種 |
研究実績の概要 |
Pd(II)三核double-walled triangle (DWT)の自己集合では、(1) オリゴマーの形成、(2) 環化反応、(3) 架橋反応の3つに大別されるが、実験研究(Quantitative analysis of self-assembly process: QASAP)において、DWTに必要な大きさのオリゴマーの成長が進んだ後、環化反応や架橋反応が進行することが明らかとなった。一方、環化反応、架橋反応のどちらが先に起こるかははっきりしなかった。そこで、DWT系について反応ネットワークを作成し、実験結果を再現する速度定数のパラメータセットをマスター方程式により求めた。この結果を利用し、反応ネットワーク内で自己集合過程をシミュレーションし、環化反応、架橋反応について解析したところ、3回起こる架橋反応のうち最初の架橋反応は環化の先に起こる方が優先していることが明らかとなった。 続いて、反応ネットワークを利用し、原料となる二座配位子(L)と金属イオン源(M)の化学量論([L]/[M])の変化により速度論支配によって目的とするDWTの収率がどのように変化するか、また、特定の準安定種が速度論的にトラップされるかを調べた。その結果、[L]/[M]を大きくするとDWTの収率の上昇が見られる一方で、[L]/[M]を小さくすると、DWTの収率が低下した。この傾向は実験においても確認され、ネットワークモデルを使って生成物の収率の変化を予測できることが明らかになった。さらに、DWTの収率が低下した条件では、M:L:X (Xは脱離配位子) = 2:2:4の種の生成が増えていくことが明らかになった。実際にこのような種が生成していることがNMR測定及び質量分析から確認された。この結果、反応ネットワークモデルを利用することで、複雑な分子自己集合過程の予測が可能であることを実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、分子自己集合における速度論的な側面をさらに詳しく明らかにする目的で、実験結果を理論解析し、架橋反応と環化反応という共に分子内で進行する反応に関する評価を行うことができた。さらに、このように構築した反応ネットワークを反応予測に利用できることを実証することもでき、速度論支配で進行する分子自己集合を反応ネットワークという単純化されたモデルを使い記述できることが明らかになった。これらの成果は、反応ネットワークを利用することで、速度論支配の分子自己集合を理解し、さらにその一般原理の抽出に役立てられることを意味し、その意義はとても大きいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、反応ネットワークを利用した反応解析および反応予測における進展があり、速度論で支配される分子自己集合に対する理解が深まった。今後は、速度論支配下で如何に分子自己集合をコントロールするかに研究を展開する予定である。特に、熱力学的に安定な種をボルツマン分布以上に形成することや、準安定な種を主生成物として得るなど、速度論支配における利点を最大限に引き出す実験条件や一般原理を突き止める研究を進める。
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