研究課題/領域番号 |
19H02732
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
桑田 繁樹 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (10292781)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロトン共役電子移動 / 超分子化学 / 窒素 / 二酸化炭素 / ジホスフィン |
研究実績の概要 |
本研究は、プロトン応答部位となる配位子と電子授受部位となる遷移金属が集積した超分子構造を構築し、窒素、二酸化炭素に代表される不活性分子への多プロトン、多電子の注入を目指すものである。とくに、2つの金属サイトを、互いに直接結合して失活することのない距離に固定できるリンカー配位子として当研究室が開発した1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(DPPBz)に着目して研究を推進している。 その結果、まずDPPBz がルテニウム、ロジウム、イリジウムなど、広範な後周期遷移金属のハーフサンドイッチ型錯体と反応して、所望の二核錯体を高効率に与えることを見いだした。とくにルテニウム錯体については、窒素固定における重要な中間体の一つであるヒドラジンと反応し、ジアゼン(HN=NH)が二つのルテニウムの間に架橋配位した錯体を生じることがわかった。本来は不安定分子であるジアゼンの水素原子が、ルテニウム上の塩素配位子と分子内水素結合を形成することによって安定化を受けている。 また、多プロトン応答型ピンサー配位子をもつルテニウム錯体についても、ルテニウムがDPPBz配位子二つで、適切な距離に保持された二核錯体を得ることができた。ルテニウム間の空間には窒素、二硫化炭素が取り込まれることも見いだした。 さらに、ジメチルスルホキシド錯体を出発原料とすると、三つのDPPBz配位子で連結された、中空構造をもつ二核ルテニウム錯体が収率よく得られた。一連の錯体の構造や分子内水素結合について、単結晶X線構造解析をはじめとする各種分析によって明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度までの研究の結果、 (1) DPPBz配位子が種々の後周期遷移金属に対する、一般性の高いリンカー性配位子として機能する (2) 適切な出発原料錯体を選択することによって、金属:リンカー組成比やトポロジーが異なる様々な二核錯体が得られる。また、共存する配位子や対アニオンに応じて中心骨格のコンフォメーションが大きく変化する (3) 生じる超分子錯体が、窒素、ヒドラジンのような窒素固定関連基質と反応する ことが実証された。一連の結果は、超分子構造構築におけるDPPBz配位子の有用性と、生じるユニークな超分子構造が不活性小分子の活性化、変換に有用であるという、研究開始当初の作業仮説を実証するものである。一連の成果は Chemical Communications、Dalton Transactions などの国際誌、あるいは環太平洋国際化学会議など国内外の学会にて遅滞なく発表している。本研究は当初の計画通り順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画最終年度である令和4年度は、不活性分子への多プロトン、多電子の注入という目的に適した、より多くのプロトンを供与できる部位をもつピンサー型錯体に対して、DPPBz配位子による連結法を適用する。とくに、これまで主に検討してきたルテニウム以外の金属への展開を図る。同時に、複数のDPPBz配位子と金属に取り囲まれた空孔をもつ超分子錯体について、共存配位子、対アニオン、溶媒などに対する構造応答性を調べるとともに、その超分子空間を活用した不活性小分子の活性化、不安定小分子の捕捉安定化を引き続き推進する。窒素固定関連基質以外にも、二酸化炭素、窒素酸化物、水素などの空孔内取り込みを図る。 一方で、DPPBz配位子に有機ヒドリド部位を付与したジホスフィンや、ホスフィン以外の配位部位を有する新しいリンカー配位子を開発し、類似の超分子構造構築に応用する。 得られた結果を取りまとめ、国際学会も含めた場での成果発表をおこなう。
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