研究課題/領域番号 |
19H02734
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松田 亮太郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00402959)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノポーラス金属錯体 / 吸着 / クラスター |
研究実績の概要 |
自然界の多くの物質は粒子等の「構成単位」が複数集まることによって、高次の集合体となり、より複雑な機能を発現する。この集合化現象には金属ナノ粒子や水分子のクラスレートのように、ある「特定の数(マジックナンバー)」の構成単位が集合化し、特異的性質を発現する物質が存在し、この特定の数は、高度な機能を発現するうえで重要であることが多い。我々はこれまでに、あるNP錯体において、ナノ空間表面に吸着のトリガーとなる官能基を配置すると、そのナノ空間内にアセチレン6分子の分子クラスターが形成し、特定の圧力で急激にアセチレンが吸着されることを見出している。 しかしながら、気体クラスター形成のためにナノ空間に求められる要素の体系的な理解や、気体クラスターの熱力学的な基礎研究はまったく不十分である。また、気体分離などの機能展開への検討は全く行われていない。これをふまえ、当該年度は昨年度焦点を当てた二酸化炭素に加えて、酸素など他のガスも用いてクラスター型吸着に関して検討を行った。その結果、下記の成果を得た。 1.液相中に溶解した酸素分子をナノ空間へ吸着させ、光によって、ナノ空間に捕捉することに成功した。ナノ空間中に溶媒分子と酸素分子が複合クラスター状態で吸着していると考えられる、世界で初めての発見をした。本成果は論文として国際誌に発表した。 2.オープンメタルサイトと補助有機分子によって、二酸化炭素の吸着機能の高度化に成功し、本成果を論文として国際誌に発表した。 3.連鎖分子活性化によるクラスター形成のために、空間内部に光活性化部位を導入した新規MOFの合成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初はナノ空間中で同一分子同士でクラスター形成するものと想定していた。しかし、溶媒分子とガス分子の異種の分子が協同的にクラスター型で空間内部に捕捉されることを発見し、それを論文として発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下の課題3および4を中心に検討を進める。 課題3:連鎖分子活性化によるクラスター形成の検討 昨年と引き続き本課題の検討を継続して実施する。同じ炭素数の飽和炭化水素と不飽和炭化水素の分離は極めて困難であり、学術的にも産業的にもその注目度は高い。この命題に対して、不飽和結合の連鎖的な活性化、すなわちリビングラジカル重合や超分子重合の概念をクラスター化へ適応することを検討する。我々は、すでにナノ空間中にラジカルやカルベン、ナイトレンなどの活性種を光照射によって生成させてきており、昨年度はその中でも三重項カルベンがナノ空間内で非常に安定に存在できることを証明した。今年度はこの三重項カルベンを起点にクラスター吸着が可能かどうかの検討を行う、 課題4:吸着分離への機能展開 クラスター型吸着機能を利用して、酸素・窒素・アルゴンの空気分離や、オレフィンとパラフィンなど炭化水素分離を検討する。
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