自然界の多くの物質は粒子等の「構成単位」が複数集まることによって、高次の集合体となり、より複雑な機能を発現する。この集合化現象には金属ナノ粒子や水分子のクラスレートのように、ある「特定の数(マジックナンバー)」の構成単位が集合化し、特異的性質を発現する物質が存在し、この特定の数は、高度な機能を発現するうえで重要であることが多い。我々はこれまでに、あるNP錯体において、ナノ空間表面に吸着のトリガーとなる官能基を配置すると、そのナノ空間内にアセチレン6分子の分子クラスターが形成し、特定の圧力で急激にアセチレンが吸着されることを見出している。 しかしながら、気体クラスター形成のためにナノ空間に求められる要素の体系的な理解や、気体クラスターの熱力学的な基礎研究はまったく不十分である。また、気体分離などの機能展開への検討は全く行われていない。これをふまえ、当該年度はカルベンやラジカルなどを活性点として細孔表面に導入し、ナノ空間内にガス分子を吸着させその挙動について検討し下記の結果を得た。 1.MOFナノ空間に光照射を行い、配位子の二重結合部位を励起させたのち、エチレン誘導体を吸着させたところ、通常は見られないエチレンと配位子がラジカル的に付加した生成物をえることが分かった。本成果を論文として国際誌に発表した。 2.ジアゾ誘導体をMOF骨格に導入し、これに光照射することで、安定なカルベンをナノ空間に発生させることに成功した。また、このカルベンが通常よりかなり高温まで安定であることを見出した。さらに、酸素分子と反応させて、化学的に吸着捕捉する可能であることを発見した。
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