研究課題/領域番号 |
19H02738
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦子 (升谷敦子) 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (10633464)
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研究分担者 |
唐島田 龍之介 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (40783303)
壹岐 伸彦 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (50282108)
原賀 智子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 バックエンド技術部, 研究主幹 (80715227)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ランタノイド / 結晶化 / 相互分離 |
研究実績の概要 |
高レベル放射性廃液は長寿命の放射性核種アクチノイド(An)を含み,処分方法に関する社会的合意を形成することが難しい廃棄物である.この高レベル放射性廃液処理において,Anと同じfブロック金属であるランタノイド(Ln)を分離する技術が近年必要とされている.本研究では,三脚型シッフ塩基配位子錯体を生成し結晶化させることを利用し,An/Ln分離法を開発することを目指している.本年度は,昨年度に続いて放射性がなく取り扱いが容易なLnを用いて分離条件の最適化及び分離機構の検討を行った.分離対象としては,ネオジム磁石スクラップからネオジム (Nd) とディスプロシウム (Dy) を分離回収する技術へ展開する可能性を考え,NdとDyを選択して実験を行なった.以下に本年度得た成果の概要を示す. (1) 核磁気共鳴分光法によりNd錯体とDy錯体の溶液内構造を検討した.その結果,ジメチルスルホキシドと2-プロパノールの混合溶媒中でどちらの錯体も7配位構造をとる可能性が示唆された. (2) 分離を行う際のジメチルスルホキシドと2-プロパノールの混合比を最適化するため,各混合比で錯体の溶解度を決定した.その結果,ジメチルスルホキシド : 2-プロパノール = 1 : 3の体積比の混合溶媒に対するNd錯体とDy錯体の溶解度の差が大きく,Dy錯体の溶解度が低くなり,分離に適していることが分かった. (3) 配位子,金属イオン,塩基であるジイソプロピルエチルアミン (DIEA)の混合比を変え,生成する結晶中に含まれるDyの純度を調べた.その結果,Dy : Nd : 配位子 : DIEA = 1 : 1 : 2 : 3の条件でDyの純度が高くなり99.4(1)%となることが分かった. 以上,錯体生成過程と結晶化過程の協働に基づき,一段階で高純度のDy錯体を結晶化できる条件を決定することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はNd/Dy分離条件を精査し,一段解で高純度のDy錯体を得る条件を確定することに成功した.本年度の研究により,Ln/An分離の実験に向けた機構の検討が進展した.さらに,Nd/Dy分離法としては,多段階分離プロセスが不要、配位子合成が容易であるという利点から、ネオジム磁石スクラップからNdとDyを分離回収する方法への展開が期待できる.以上のように,Ln/An分離に向けた基礎的な知見を獲得することができ,研究の展開の可能性が拡がったことから,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を基にして,今後はAn/Ln分離実験に取り組む.Anの一つであるアメリシウム(Am)と,Lnの一つであるユーロピウム(Eu)を相互分離する対象の金属イオンとし,結晶化によって分離することを目指す.結晶化による分離の挙動を,ガンマ線測定により評価し,分離条件の最適化に取り組む予定である.
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