研究課題/領域番号 |
19H02739
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福山 真央 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (40754429)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然乳化 / マイクロ水滴 / ナノ粒子 / イムノアッセイ / マイクロ流体 |
研究実績の概要 |
再生医療の分野においては「細胞の品質管理」の観点より、高速・高選択性・ダメージレスな細胞分離・精製法の開発が望まれる。しかし、現在普及するFluorescence Activated Cell Sorting system (FACS)やMagnetic Cell Sorting System (MACS)では、この3つの要件を同時に満たすことはできなかった。本研究では、ナノ粒子の逆ミセルへの輸送現象を細胞分離の原理として用い、超高速・ダメージレス細胞精製法の開発を目指す。 本年度は、マイクロ流体デバイス中のマイクロメートルサイズの水滴(マイクロ水滴)に細胞を閉じ込め、その細胞からの分泌物をイムノアッセイで検出する手法を確立した。具体的には、マウス肺ガン細胞由来の3LL細胞から放出されるPGE2の検出を試みた。本細胞はエトポシドで刺激することで、PGE2を放出することが知られている。マイクロ水滴内でのイムノアッセイを行うにあたり、競合イムノアッセイ系を選択した。具体的には、蛍光標識PGE2(トレーサー)、抗PGE2抗体をサンプルに添加し、マイクロ水滴を形成した。トレーサーは逆ミセルに分配した一方でトレーサー抗体複合体はマイクロ水滴にとどまった。本年度は、トレーサーに用いる蛍光色素種類、およびマイクロ水滴に接触させる逆ミセル溶液の種類の最適化を行った。その結果、マイクロ水滴にエトポシド刺激した細胞が0 - 8個入っている系において、細胞数に伴いPGE2濃度上がる様子を本イムノアッセイ系で評価できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マイクロ水滴内に閉じ込めた細胞からの分泌物をイムノアッセイで半定量的に計測できた。1細胞での定量は難しいと考えられるものの、数個の細胞であれば、分泌するPGE2の計測が可能であることが示唆された。これは、提案した自然乳化を用いた細胞ソーティング技術の実現可能性を評価するうえで大きな前進であると考えている。 一方で、本年度も逆ミセル接触時におけるマイクロ水滴において、細胞の生存率向上のための検討を行った。前年度、Jurkat細胞では生存率が高い(80%)マイクロ水滴内の閉じ込め条件を見出したものの、3LL細胞を用いた場合は生存率がそれよりも低かった。一般的に細胞の生存率が高いとされるフッ素系溶媒等を用いた条件も検討したが、生存率の改善は見られなかった。この結果より、逆ミセルへの分配を利用したマイクロ水滴内イムノアッセイでは、適用可能な細胞種が限られることが分かった。 以上を踏まえ、本年度はおおむね順調に進展していると結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
1) Span 80により自然乳化がなぜ起きるのか、メカニズムの解明を目指す。これまでに、細胞生存率などの問題で、Span 80を利用した系の限界が分かってきた。一方で、他の市販の界面活性剤を用いても、本研究で実証したようなイムノアッセイを再現することができないことが分かってきた。今後、より細胞との適合性が高く、かつ、自然乳化を起こすような水-界面活性剤-有機溶媒の系を模索する必要がある。そのためには自然乳化を起こる原因を理解し、それに基づき界面活性剤を選択、あるいは新規にデザインする必要があると考えられる。 2) マイクロ水滴の磁気ソーティング条件を検討する。具体的には、磁気ソーティングが達成可能な磁器粒子量と、マイクロ水滴を安定に操作するための磁気ソーティング装置の壁面濡れ性の検討を行う予定である。
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