研究課題/領域番号 |
19H02740
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
齋藤 伸吾 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60343018)
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研究分担者 |
半田 友衣子 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20586599)
吉本 敬太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60392172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNAアプタマー / キャピラリー電気泳動 / 次世代シーケンシング / 分子認識 |
研究実績の概要 |
近年,DNAアプタマー(分子認識する一本鎖DNA)の認識能が様々な分野で注目されている。既存のアプタマー獲得法では,ランダムDNAライブラリーから選抜操作を繰り返してアプタマー配列が得られるが,DNAアプタマーの性能の判別や機能の選抜はできない。また,高性能なアプタマーを取り逃がしている可能性が高い。本研究では,キャピラリー電気泳動法(CE)の高分離能と次世代シーケンサー(NGS)の配列決定能を組み合わせ,わずか1回の選抜操作での高速なアプタマー選抜を達成することを目指す。また,得られた大規模な配列情報から選択則に基づいてアプタマー配列を判別し,アプタマーの取り逃がしなく,性能予測をし,かつデータベース化できる新規手法(SR-CE選抜法)を確立する。 二年目である令和二年度は,血液凝固因子トロンビンタンパク質に対してSR-CE選抜後にNGSを行い,選抜プールの大規模配列群に対して,機械学習(クラスタリング)を適用した。そこで得られた配列とトロンビンタンパク質の結合実験を行い,解離平衡定数と解離速度定数を計測した。また,それらの結合パラメータに基づく理論式と実測値の一致から,SR-CE選抜法が「高性能アプタマーの取り逃がしが少なく,性能予測も可能な選抜法」であるというコンセプトが正しかったことが実証された。また,分子ふるいCEによって,ランダムDNAライブラリーを構造形成型と構造非形成型のものに分割することにも成功し,それら高次構造の異なるライブラリーを用いてトロンビンタンパク質に対するSR-CE選抜も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度には,2回のSR-CE選抜で類似の配列が選抜され,その類似配列数の序列に相関があったことことが検証されたが,今年度はその結合能の調査を行った。さらに,得られた解離平衡定数と解離速度定数から,選抜によって得られる類似配列の数が,解離平衡定数と解離速度定数に基づく理論式と定性的に一致することが検証できた。これにより,SR-CE選抜のコンセプトがおおよそ正しかったことが証明された。 さらに,今後は高次構造の異なるタイプのDNAアプタマーを獲得する予定であるが,ランダムDNAライブラリーの高次構造の違いに基づく,分子ふるいCE分離と分画分取に成功した。これにより,次年度には構造変化を伴う分子認識をするアプタマーの選抜に挑むことが可能である。 本年度はコロナの影響で実験系の検証の進展が遅く,参加予定の国際学会も次年度に繰り越しとなったが,代わりに計算機を使う配列解析手法の構築が想定以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り,高次構造の異なるDNAライブラリーを用いたSR-CE選抜プールの配列をNGS解析し,それらに対してクラスタリングを行う。クラスタリングの結果得られた配列を結合実験し,アプタマーであるかを確かめるだけでなく,蛍光共鳴エネルギー移動などを使い,分子認識する際に構造を大きく変化させるアプタマーを獲得できているかを検証する。 また,VEGFタンパク質に対してもSR-CE選抜を行い,トロンビンタンパク質以外でもSR-CE選抜のコンセプトが成立すること,さらにそれぞれのプールの比較を行い,それぞれに特徴的な配列を選抜できているかを検証する。 さらに,本年度に着想した大規模配列をクラスタリング以外の機械学習,特に深層学習に適用し,アプタマーの特徴を捉えられるかにも挑戦する予定である。
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