研究実績の概要 |
がんの早期診断法の確立を目指して,がん有効なマーカーとして期待されているテロメラーゼに注目し,電気化学的テロメラーゼアッセイ法に最適なプローブ分子として環状フェロセン化ナフタレンジミド(cFND)を開発し,これによるテロメラーゼ活性検出を達成するため,本年度は以下の研究を遂行した。
1) 前年合成完了した環状フェロセン化ナフタレンジイミドとして,環状のリンカー内部にフェロセンを導入した新規環状フェロセン化ナフタレンジイミドとして、新たにincFND22とincFND23の電気化学測定を行った。1本鎖DNA固定化電極とテロメアDNA由来の4本鎖DNA固定化電極で電流応答を比較したところ,incFND33は他の電気化学指示薬と比べ,高いテロメア4本鎖選択性を示した。incFND23はテロメアDNAよりもc-myc DNAに高い親和性を示したことからパラレル4本鎖DNAに選択的に結合する化合物であり,incFND33はテロメア4本鎖DNAに高い親和性を示すことが昨年の結果で示されており,電気化学測定結果はそれを支持する結果であった。 2) 電気化学的テロメラーゼアッセイに適用するため,条件の最適化を行った。その結果,incFND33を指示薬としたとき,50 cells/uLのHeLa細胞破砕液で80%の高い電流増加率を示した。これはこれまでのテロメラーゼ活性検出試薬であるFNDよりも高い電流増加率であった。 3) cFND3-5,incFND23, indFND33について, 細胞毒性を評価したところ,シスプラチンよりも低い濃度で細胞毒性を示すことが分かった。これより、本研究で開発したcFND3,4,5,およびincFND23, incFND33は抗がん剤としての可能性を有していることが分かった。
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