研究課題/領域番号 |
19H02750
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
新井 敏 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (70454056)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蛍光イメージング / 温度センサー / 細胞熱産生 |
研究実績の概要 |
申請者は、これまでに様々な蛍光温度センサーを開発してきた。それぞれに、検出感度や細胞内局在制御のしやすさなどの差異はあるものの、未だに、定性的な温度変化の情報を取得できる程度に適用範囲が限定されており、温度計測技術の検出感度・定量性は、生物学で求められるスペックからは乖離している。 本申請では、センサー設計を抜本的に変更し、蛍光温度センサーの劇的な感度と定量性の向上を目指す。研究期間の前半は、今までの感度を超える超高感度の蛍光温度計のためのスクリーニング実験を行う予定である。初年度は、蛍光タンパク質の配列の適切な部分に、温度に応答して構造が大きく変化するモジュールを挿入した設計を考案、幾つかの温度感受性のモジュールとなるポリペプチドを選び、これを蛍光タンパク質の一部に挿入した変異体を作成した。ベース温度は、細胞応用を想定して37℃に設定し、温度を50℃まで変化させて、それに伴う蛍光強度の大きさを解析した。結果、ある種の蛍光タンパク質において、温度変化に応答して、蛍光強度が大きく変化する変異体を見出した。感度について、1℃変化あたり何%蛍光強度が変わるかを指標としたとき(%/℃)、目標とする感度からは遠いが、申請者らが開発してきた従来の4%/℃を超える蛍光温度センサーの候補になり得る変異体は幾つか見つかった。 また、定量性を担保する取り組みとして、上記のスクリーニング実験に併行して、輝度変化に依存した手法から、より定量性の高い蛍光寿命を基にした計測手法を移行するための顕微鏡セットアップも開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間の途中で、申請者の異動とそれに伴うラボの立ち上げ等があり、研究活動が途中で中断してしまったが、年度の中盤以降は、順調にスクリーニング実験を再開している。初年度では、当初目標としていた感度には達成していないが、今までの蛍光温度センサーの温度センシングの感度から向上が見られるため、センサーの設計自体の方向性には、ある程度の感触を得ている。また、研究期間の後半で重要になってくる、蛍光寿命測定のための顕微鏡の改造にも、技術的な課題があったが、初年度に解決することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、初年度に構築した手法で、スクリーニング実験を継続する。次年度は、蛍光タンパク質の種類をもう一度見直し、温度感受性モジュールと蛍光タンパク質を繋ぐ部分のリンカーの最適化などを中心に、最適化を行う。ある程度の感度のところで、定量イメージング実験へ移行する予定である。
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