研究実績の概要 |
本年度、イミン化合物群のグリーン合成のターゲットとして、主にUgi反応に力点を置いた研究を推進した。Ugi反応は、one-pot反応による代表的な多成分連結反応として知られており、環境低負荷な反応として有機触媒による酸素を用いた酸化反応を経由したUgi反応について検討した。有機触媒として、サリチル酸を中心に検討することとした。 今回の研究では、効率的なメタルフリー多成分Ugi反応において、酸素酸化によるアミンのイミンへの酸化を第一段階として、有機触媒である2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸の存在下、ベンジルアミンのホモカップリングを行い、その後one-potで、カルボン酸、イソシアニドを加えて第二段階の多成分連結反応を行う。通常、この二段階目には金属触媒などを用いることが多いが、第一段階で用いる有機触媒のみで反応が進行する。 芳香族基質を用いると反応は94%で進行し、10種以上の反応基質に適用可能であった。 また、アミンのクロスカップリングによる酸化的Ugi反応は未だ未踏領域であった。これは、クロスカップリングイミン生成物の例は少ないためであり、ベンジルアミンとモデル基質としてヘキシルアミンのクロスカップリング反応について検討した。 触媒として、5 mol%の2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸を用いると、47%のクロスカップリング体と21%のホモカップリング体が確認された。そこで、触媒量を15 mol%に増加したところ、79%の収率でクロスカップリング体が形成され、ホモカップリング体をトレース量に抑えることができた。この最適化された反応条件を使用してone-pot反応を進めたところ、脂肪族に対しても、50-80%の収率で反応が進行し、10種以上の反応基質に展開可能であることを明らかにした。
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