昨年度は、アゾベンゼン光応答モノマーが形成するラセン超分子ポリマーの光応答挙動について調査した。2017年に報告した同系統の超分子ポリマーは、アゾベンゼンモノマーが柔軟なリンカー部位を包含していた。そのため、紫外光を照射するとラセンフォールディングした主鎖が均一に湾曲性を失い、ラセンがアンフォールディングした。今回、柔軟なリンカーを取り除いた新規モノマーを合成した。ラセン超分子ポリマーをメチルシクロヘキサン中で調製し、紫外光を照射したが、室温では全くアンフォールディングが起こらなかった。そこで溶液温度を50度付近まで上げて紫外光照射を行ったところ、アンフォールディングが進行した。アンフォールディング過程をAFMにより追跡すると、以前の系とは対照的に、不均一にアンフォールディンが起こることが明らかになった。すなわち、ラセン-ランダムコイル構造を同一主鎖内に有する中間構造を経て、最終的にランダムコイル構造のみからなる超分子ポリマーを与えた。粗視化MD計算により以前の分子と今回の分子のオリゴマーを構築し、シス体のアゾベンゼンをランダムに形成させて主鎖の構造変化を観察すると、以前の柔軟なモノマーからなるオリゴマーの方が主鎖の大きな構造変化が起こることが示された。このことから、超分子ポリマー主鎖内の密度が構造変化のメカニズムに影響を与えることが明らかになった。この知見は、今後の超分子モノマーの設計指針において重要な指針となる。本結果は、Angew. Chem. Int. Ed.誌に投稿され、掲載された。
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