研究実績の概要 |
研究の最終年度である2021年度では、2020年度に引き続き、一連の新規ビニル化合物の単独重合性、反応性の検証と鎖末端定序性官能基化ポリマーの合成を行った。具体的には、1)リビングポリスチレンやリビングポリイソプレンなどのポリマー鎖末端アニオンと、非重合性の1,1-ジフェニルエチレン(DPE)誘導体である、1,1-ビス(4-(1-アダマンチルカルボニル)フェニル)エチレン(Ad2E))または1,1-ビス(4-シアノフェニル)エチレン(CN2E)を用いた付加反応を検討した。求核性の強いリビングポリマーを直接反応に用いると、カルボニル基やシアノ基に対して副反応が部分的に起こるが、上記リビングポリマーアニオンと無置換のDPEとの1:1反応を行い、求核性を低下させたDPE型アニオンを使用した場合には、副反応無くAd2EやCN2Eとの1:1付加反応が定量的に進行し、ポリマー鎖末端に、対応するAB型二連子を定量的に導入できることを見出した。2)一方、電子供与性のトリアルキルシリロキシ基(SiO2E)や、中程度の電子求引性基であるブロモ基(Br2E)、エチニル基(TMSE2E)を有するDPE誘導体を使用することで、SiO2E-Br2E-CN2EやDPE-TMSE2E-CN2Eなど様々なABC型三連子を有する末端定序性官能基化ポリマーの合成に成功した。一方、こうしたDPE誘導体は、カリウムナフタレンとの反応で、AA二量体ジアニオンを生成する。このリビングアニオンにB分子、C分子を順に添加することで、定序性BAAB型4量体オリゴマーやCBAABC型6量体オリゴマーが得られることを明らかにした。こうしたDPE誘導体骨格から構成される定序性高分子の合成において、置換基の電子的効果が重要であることが確かめられた。
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