研究実績の概要 |
“ビニルエーテルのラジカル重合”を基軸に,これまで学理として成立していないエーテル基を基盤とする「アーキアミメティック」化学体系を新しく構築することを目的に,一昨年より継続して本研究を実施した。 まず,昨年に引き続きオキシエチレン鎖を側鎖に有する親水性ビニルエーテル(ジエチレングリコールモノビニルエーテル,DEGV)の精密ラジカル重合を行った。さらに,得られたDEGVポリマー(PDEGV)の側鎖をTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化によってカルボキシル化し,側鎖にカルボン酸を有するacid-DEGVユニットからなるポリマー(acid-PDEGV)を得た。本酸化においてTEMPO量を調整することで,酸化度を制御することができた。例えば,0%酸化した状態つまりPDEGVは,水溶性であった。一方,完全に酸化したacid-PDEGVも水溶性であった。しかし,その中間であるDEGVとacid-DEGVからなる共重合体は,これまでにない興味深い水溶液特性を示した。例えば56%のacid-DEGVユニットを含有するPDEGVの場合,常温で約1%水溶液でも系全体がゲル化した。得られたゲルは,温度上昇(約40度)により水素結合が弱まり,低粘度水溶液(ゾル)に戻ったが,乾燥後に再度水を加えると,瞬時にゲルとなる水素結合性の物理ゲルであった。つまり,加温を認識しゲルを崩壊させる「刺激履歴認識材料」が得られた。このように,「アーキアミメティック」化学体系の一つとして,ポリビニルエーテルからこれまでにない刺激履歴認識材料を構築し,新しい材料設計の基盤を築いた。 上記の他,ポリビニルエーテルのグラフト型ポリビニルエーテル集合体を設計し,重合誘起自己組織化法によるナノ組織体合成を行った。得られた集合体は,ポリビニルエーテル相をシェルとする微粒子(100~800 nm)であり,本ナノ組織体合成法の詳細な条件検討を行った。
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