“ビニルエーテルのラジカル重合”を基軸に,これまで学理として成立していないエーテル基を基盤とする「アーキアミメティック」化学体系を新しく構築することを目的に,最終年度である本年、汎用性ポリマーとの融合を行った。 まず,前年度と同様に、オキシエチレン鎖を側鎖に有する親水性ビニルエーテル(ジエチレングリコールモノビニルエーテル,DEGV)のRAFT重合を行った。次に、得られたポリマー(PDEGV)をマクロ連鎖移動剤として、フォトイニファーターRAFT重合(365nmのUV-LEDを使用)により、スチレンとのブロック共重合を行った。ここでは適切な連鎖移動剤を選択することで、望みのPDEGV-PStブロックコポリマーを得た(PSt: ポリスチレン)。その際、溶媒を1-ブタノールやエタノールにすると、スチレンは溶解するものの、ポリスチレンが不溶であるため、PDEGVをシェル、PStをコアとするコア―シェル微粒子を重合中に得ることができた。このようなフォトイニファーターRAFT分散重合をPDEGVマクロ連鎖移動剤を用いて色々なラジカル重合性モノマー(酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、N-ビニルピロリドン、N-イソプロピルアクリルアミド等)で行った。その結果、これまでに得られてこなかったこれらのブロックコポリマーならびに微粒子を、in situで得ることができた。このように、ビニルエーテルのラジカル重合を基軸に、本年新しい微粒子を得ることに成功した。 上記に加え、昨年見出した側鎖にカルボン酸を有するPDEGV(acid-PDEGV)の構造的考察も行い、温度を認識しゲルを崩壊させる「刺激履歴認識材料」の発展的検討を行った。特に、ゲル化およびゲルを崩壊させるメカニズムについてレオロジーによる検討を行い、上記微粒子合成とともにこれら「アーキアミメティック」化学体系をまとめた。
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