• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

官能基シナジーの出現/消失を利用した高分子合成・分解・変換法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19H02763
研究機関信州大学

研究代表者

高坂 泰弘  信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (90609695)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード官能基シナジー / 共役置換反応 / 化学リサイクル / 主鎖切断 / α-機能化アクリル酸エステル / α-機能化アクリルアミド / 刺激応答性ポリマー / 開環重合
研究実績の概要

[1] ドミノ型重縮合:β-ブロモ-α-(ブロモメチル)アクリル酸エステルと種々の求核モノマーを利用したドミノ型重縮合の全容が明らかになり,反応条件によって1つのモノマー対から様々な繰り返し構造を持つポリマーを合成することに成功した.また,アリル位に置換基を導入したα-(アシルオキシメチル)アクリル酸エステルとジチオールの重合も検討し,E1cBによって効率よく主鎖切断するポリチオエーテルを得た.さらに,共役置換反応が媒介する,大気下,室温でのリビング開環重合を見出した.
[2] 連鎖的な高分子主鎖切断反応:ポリ共役エステルウレタンの分解において,アリル位に導入した置換基に,分解反応の不可逆性を司る機能があることが判明した.この機能を活用し,酢酸イオンなど弱い求核剤での分解が実現した.
[3] 水素結合切断が誘起する重縮合反応:昨年度までにα-(アミノメチル)アクリルアミド類のラジカル重合体が,pH-温度応答性を示す材料を与えることが明らかになった.一方で,水素結合の切断が誘起する重縮合反応は進まず,重合開始剤を再検討する必要が生じた.
[4] ビニルポリマーのリサイクル:β-ケトエステル構造を与えるモノマーの重合を検討したが,副反応が生じ複雑な生成物を与え,解析に難航している.一方で,脱水アスピリンのカチオン開環重合に成功し,その反応機構や,生成物がけん化により主鎖切断し,モノマー前駆体を与えることを見出した.
[5] [4]に関連し,脱水アスピリンに類似の環状ヘミアセタールエステルを開始剤とする環拡大カチオン重合が,京都大学との共同研究で実現した.この成果をもとに,環状ヘミアセタールエステルの開環を利用した重付加反応について検討し,ビニルエーテルとポリ共役エステルの共重合に成功した.
[6] [2]に関連し,ポリ共役エステルの分解反応を架橋高分子の解架橋に応用した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ドミノ型重縮合で論文1報を発表したほか,主鎖切断するポリチオエーテルや,リビング開環重合の開発にも至り,論文発表の準備ができている.
ポリ共役エステルウレタンについても,アリル置換基の効果が明らかになり,関連特許の出願に至った.また,昨年度に出願した特許の補正も完了し,一連の成果について,論文発表できる見通しになった.
α-機能化アクリルアミドについては,当初狙った水素結合の切断が媒介する重縮合の開発には至っていないものの,開始剤について検討の余地が残っている.また,pH-温度応答性材料の開発に至ったが,こちらは昨年度に出願した特許の補正が完了したため,論文発表する.
脱水アスピリンについても,カチオン開環重合の細かいパラメタや機構が明らかになり,特に生成物に循環型モノマーとしての付加価値が明確になったことから,論文発表の見通しが立った.

このように,一部に当初計画とは異なる成果が含まれるものの,それぞれ特許出願が完了し,論文発表の見通しが立ったことから,順調に進んでいると評価した.

今後の研究の推進方策

[1] ドミノ型重縮合:開環重合,ポリチオエーテルの合成と分解について,論文執筆を進める.化学構造をサポートするデータなど,論文化に必要な不足データの収集に注力する.
[2] ポリ共役エステルウレタン:アリル位に芳香族置換基を導入したポリ共役エステル類について,触媒量の酢酸イオンを作用させると,主鎖骨格が異性化する反応が見出された.この反応の詳細を検討し,環境によって主鎖が剛直に変化するポリマーの開発に繋げる.
[3] 水素結合媒介重合:オプションとして設定した,環状チオラクトンを組み合わせた重合について検討する.同時に,これまでに発見したpH-温度応答高分子について,論文執筆を進める.
[4] 脱水アスピリンおよびβ-ケトエステル含有ポリマー:カチオン開環重合について,論文化に必要な細かいデータ収集を行う.β-ケトエステル含有ポリマーについて,現在3種類のモノマーの合成・重合を検討しており,引き続き重合検討を行い,β-ケトエステル含有ビニルポリマーの合成と分解検討を目指す.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 産業財産権 (4件)

  • [雑誌論文] Magnesium bromide (MgBr2) as a catalyst for living cationic polymerization and ring-expansion cationic polymerization2021

    • 著者名/発表者名
      Yuji Daito, Reina Kojima, Naoyuki Kusuyama, Yasuhiro Kohsaka, Makoto Ouch
    • 雑誌名

      Polymer Chemistry

      巻: 12 ページ: 702-710

    • DOI

      10.1039/D0PY01584A

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Divergence of polycondensation by a tandem reaction based on sequential conjugate substitutions2021

    • 著者名/発表者名
      Keito Hagiwara, Yasuhiro Kohsaka
    • 雑誌名

      Polymer Chemistry

      巻: 12 ページ: 702-710

    • DOI

      10.1039/D0PY00648C

    • 査読あり
  • [学会発表] アクリル骨格含有不飽和ポリエステル:硬化と分解が同一骨格で可能な高分子の合成2021

    • 著者名/発表者名
      高坂泰弘
    • 学会等名
      日本接着学会次世代接着材料研究会PartⅧ 第3回例会
    • 招待講演
  • [学会発表] アクリル骨格含有不飽和ポリエステル:主鎖の構築と連結・切断・変換2021

    • 著者名/発表者名
      高坂泰弘
    • 学会等名
      高分子学会 精密ネットワークポリマー研究会 第14回若手シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] カルボン酸とα-(ハロメチル)アクリル酸エステルの共役置換反応を用いた架橋ポリマーの合成と解架橋2021

    • 著者名/発表者名
      北河 大葵,大矢 高史,高坂 泰弘
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会
  • [学会発表] 脱水アスピリンのカチオン重合:ビニル重合 vs 開環重合2020

    • 著者名/発表者名
      風間 茜,高坂 泰弘
    • 学会等名
      第69回 高分子学会年次大会
  • [学会発表] 脱水アスピリンのラジカル重合およびカチオン重合2020

    • 著者名/発表者名
      風間 茜,高坂 泰弘
    • 学会等名
      第69回高分子討論会
  • [学会発表] アクリル基含有環状ヘミアセタールエステルの合成と重合2020

    • 著者名/発表者名
      山下 舞,松橋 洋介,山下 修司,高坂 泰弘
    • 学会等名
      第69回高分子討論会
  • [学会発表] α-機能化アクリルアミド合成法の開発と温度/pH応答性ポリマーへの展開2020

    • 著者名/発表者名
      Chinbat Nyamdolgor ,高坂泰弘
    • 学会等名
      2020年度東海高分子研究会学生発表会
  • [学会発表] 共役置換反応による室温での分解が可能な不飽和ポリウレタンの開発2020

    • 著者名/発表者名
      田中杏里,萩原敬人,高坂泰弘
    • 学会等名
      2020年度東海高分子研究会学生発表会
  • [産業財産権] 架橋高分子化合物およびその製造方法並びに高分子化合物の生成方法2021

    • 発明者名
      大矢高史,北河大葵,▲高▼坂 泰弘
    • 権利者名
      大矢高史,北河大葵,▲高▼坂 泰弘
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2021-033673
  • [産業財産権] α-(置換メチル)アクリルアミド類及びその製造方法2021

    • 発明者名
      チンバト ニャムドルゴル,▲高▼坂 泰弘
    • 権利者名
      チンバト ニャムドルゴル,▲高▼坂 泰弘
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2021-073805
  • [産業財産権] α-(ヒドロキシメチル)アクリル化合物およびその製造方法、ならびに その重合体2021

    • 発明者名
      田中杏里,▲高▼坂 泰弘
    • 権利者名
      田中杏里,▲高▼坂 泰弘
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2021-073806
  • [産業財産権] 高分子化合物の分解方法2021

    • 発明者名
      田中杏里,萩原敬人,▲高▼坂 泰弘
    • 権利者名
      田中杏里,萩原敬人,▲高▼坂 泰弘
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2021-073804

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi