本研究は二官能性POSSモノマーを用いた重合により得られる高分子の構造とレオロジー物性等との関係を評価することで、既存の高分子材料では達成できない物性間トレードオフを解消する革新的ゲート絶縁膜の開拓を目的とする。 POSS主鎖型ポリアゾメチンの他にPOSS主鎖型ポリウレアおよびポリアミド等も加えてPOSSの構造およびPOSS間の鎖長や構造を系統的に変化させた高分子合成を行い、得られた高分子材料の熱特性と力学特性を調査することにより数珠玉構造に由来する分子レベルでの材料特性の学術的検討によって、耐熱性と柔軟性などのトレードオフを解消する分子設計指針を見出すことを目的として研究を行った。その結果、2021年度は以下の成果を得た。 1)開発したアミノプロピル基を2個有する二官能性ダブルデッカー型シルセスキオキサン(DDSQ) モノマーと種々のテトラカルボン酸二無水物との重合によりDDSQ主鎖型ポリイミドを合成した。得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの汎用溶媒に可溶であり、従来のPOSS含有ポリイミドよりも著しく低い135 ℃付近にガラス転移点が確認された。また、本ポリマーの弾性率は一般的な全芳香族ポリイミドの25%程度と柔らかいにも関わらず、5%重量減少温度が480℃と高い耐熱性を有していることがわかった。 2)3-アミノプロピル基が修飾された二官能性ヘキサイソブチル置換POSSモノマーと種々のジイソシアナートとの重合を合溶液の濃度を変えて検討したところ、ジイソシアナートの構造に依存してゲル化濃度が変化し、構造が剛直なジイソシアナートを用いた場合が、最も低濃度でゲル化することが分かった。アミノプロピル基を2個有する二官能性 DDSQモノマーを用いた場合は、低濃度でのゲル化は観測されず、POSS骨格の違いによって分子間相互作用の強さに影響することがわかった。
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