研究課題/領域番号 |
19H02767
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
金 仁華 神奈川大学, 工学部, 教授 (60271136)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キラルシリカ / ポリエチレンイミン / エナンチオマー識別 / 光学活性材料 |
研究実績の概要 |
①オキサゾリン重合を経由したポリエチレンイミン(PEI)、キラルポリ(2-メチルエチレンイミン)(PMEI)の分子設計と合成;②そのポリマーと不斉有機酸との自己組織化を経由してなるキラル高分子錯体(χ@PEI/A)の調製とそれにテンプレートされるキラルナノシリカ(χ@PEI/A/SiO2)の合成;③キラルPMEIの両末端にPd(II)の配位により環状ポリマーの合成の3つの手法を確立した。
さらに、④それらのキラルシリカをキラルソースとして用い、キラルシリカ存在下でのアキラルモノマーのラジカル重合、縮合重合を行うことにより、有機・無機複合キラル材料を得るばかりか、生成したポリマーへのキラル転写も確実に進行し、ポリマー単独でも顕著な光学活性を示した。また、シリカのキラル情報がポリマーに転写されたことにとどまらず、ポリマーはキラルホストとして機能し、アキラルのゲスト分子に光学活性を誘起することが判明した。
⑤上記方法で得られる無機・有機複合体のキラル材料の機能展開に、アキラルな発光分子・錯体・会合体からの円偏光発光、キラルシリカ系に引き起こされるアミノ酸エナンチオマーの表面増強ラーマン散乱の発現などを見出した。一連の結果から、シリカのキラリティは外形上のモルフォロジーに由来せず、Si-O結合におけるアシンメトリーにより発現することがより明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリカの不斉は外形上の螺旋などのモルフォロジーではなく、やはりその化学結合Si-Oにおける不斉構造に起因することが、多くの実験結果(キラルシリカに誘発される有機系・無機系発光体の円偏光発光、キラルシリカの存在下、ラーマン表面増幅におけるアミノ酸エナンチオマー識別)から証明された。ただし、コロナ影響により、当初目指した放射線手法によるキラルシリカの立体化学の構造解析には挑むことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
シリカの不斉起因はSi-O結合にあることを前提に、その機能展開に焦点を絞り、キラル材料としての応用価値を追求する。 1)引き続き、ラーマン表面増幅におけるキラルシリカ存在下でのエナンチオマー識別について検討し、通常のラーマン分光法におけるキラルシリカの不斉プローブとしての応用法を確立する。 2)シリカから有機系高分子へのキラル転写の仕組みについて検討する。特に、キラリティが転写された高分子の構造解析を行い、それの不斉起因を解明する。
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