本研究は、高分子薄膜が気相中の低分子を取り込む過程及び取り込んだ分子よって引き起こされるダイナミクスの変化を追跡することを目的としている。これまで超解像顕微鏡、中性子反射率法の高度化を行いながら溶媒蒸気雰囲気下における評価を行ってきた。その中で、薄膜表面あるいは基板界面近傍における1 ~ 2 nmレベルの構造を評価する必要が生じ、そのためにはこれまでに開発した時間分解中性子反射率法では十分な評価を行うことができないことが判明した。これは、1 nm程度の構造解析を行うためには信号強度が極めて低い高角領域での測定が必須であるため、解析に十分なデータを短時間の内に得ることが不可能なためである。そこで、以前に開発したディープラーニングによる統計ノイズ除去技術をさらに発展させることで短時間で取得した中性子反射率データの高精度化を行った。U-netを応用した人工ニューラルネットワークを用い、学習を行った。その結果、これまでのデータ処理では時間軸方向の精度が低かったのに対して、新たなデータ処理法によって時間軸方向の精度を向上することができた。これにより、時間分解能を2倍以上向上することができた。このように改良した時間分解測定技術を用いることで、ポリメタクリレート系高分子及びエポキシ樹脂について、気相からの溶剤蒸気分子の吸収過程・薄膜内部における空間分布の評価を行った。その結果、高分子材料の表面あるいは基板界面に溶剤分子が局在することを明らかにした。
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