研究課題/領域番号 |
19H02769
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 敏文 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80291235)
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研究分担者 |
山本 拓矢 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30525986)
磯野 拓也 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70740075)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミクロ相分離 / ブロック共重合体 |
研究実績の概要 |
本研究は、ミクロ相分離構造の周期間隔を5nm程度に制御する新規方法論の確立を目指して、様々な分子設計のブロック共重合体(BCP)を合成し、各ポリマー構造とミクロ相分離構造の詳細な相関関係を系統的に明らかにしようとするものである。 本年度は「高分子鎖の広がり」を抑制することでBCPの周期間隔を大幅に減少させる手法を検討した。ポリ乳酸とポリスチレンからなるブロック共重合体の両ブロック側鎖に架橋性二重結合を導入し、これを大希釈条件下、オレフィンメタセシスで分子内架橋した。その結果、同種ブロック内で優先して架橋が進行し、ヤヌス型のBCPを得ることに成功した。小角X線散乱測定でミクロ相分離構造を評価した結果、分子内架橋で得られたBCPは架橋前の直鎖状BCPと比較して47%もの周期間隔縮小がみられた(24.0 nm→12.7 nm)。より低分子量の直鎖状前駆体BCPを分子内架橋することで、目的とする5 nm程度のミクロ相分離構造の実現が期待される。 また、本年度はBCP材料の耐性強化という観点の検討も行った。5 nm前後のミクロ相分離を実現できるBCPは必然的に低分子量であり、エッチング耐性や耐熱性などエッチングプロセスを考えた際の必要条件が担保できない可能性がある。そこで、このジレンマを解決できる新規材料としてオリゴ糖鎖とポリビニルフェロセン(PVFc)からなるBCPを着想した。実際に合成した新規BCPは8 nm程度の非常に微細な周期間隔でミクロ相分離することが判明した。さらに、BCPに分岐構造を導入することでミクロ相分離構造の超距離秩序性の向上を達成した。PVFcはTgが高く、エッチング耐性に優れる。一方、オリゴ糖も比較的高いTgを持つが、酸素原子を多く含むため容易にエッチングされると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終目標とする5 nmのミクロ相分離は達成できていないものの、分子内架橋という新規手法で大幅にミクロ相分離の周期間隔を縮小できることを見出した。本年度の検討で見出した分子内架橋法は合成も極めて容易であり、ポリ乳酸―ポリスチレンの組み合わせ以外にも普遍的に応用できると考えられる。また、分岐構造をBCP材料の設計に応用し、ミクロ相分離挙動との相関も評価しつつ、さらに、最終目標であるリソグラフィーへの応用も念頭に置いたBCP材料設計についても検討が進んでいる。以上のような状況から、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討の結果、分子内架橋法はミクロ相分離の周期間隔を効率的に縮小できる手法として極めて有望であることが明らかとなった。しかし、分子内架橋BCPの詳細な構造解析や合成の簡便化など課題が残されている。来年度は、分子内架橋BCPの簡便合成法の確立と同時に、様々な分子パラメータ―とミクロ相分離挙動との相関を詳細に検討していく。一方、現行の分子内架橋法ではランダムな架橋形成が起こるため、構造の均一化という点では逆行している。そこで、今後は特定の位置に架橋点を導入した前駆体BCPの分子内架橋などを検討し、構造明確な分子内架橋の実現に向けた検討も行う。この他、耐性強化を目指したBCPの設計や特殊構造BCPに関する検討も継続する。
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